リチウムイオン二次電池の健全性を、非破壊で診断する技術を開発 豊田中央研究所

豊田中央研究所は2024年2月2日、リチウムイオン二次電池(LiB)の内部で析出するリチウム(Li)金属を、高周波電流の応答から検出し、電池の健全性を非破壊で診断する技術を開発したと発表した。LiBをリユースなどで長期間利用する際の検査への応用が期待される。研究成果は2023年11月10日、Springer-Natureの論文誌「Nature Communications(オンライン)」に掲載された。

LiBは限度を超える過剰な急速充電などで過度なストレスが加わると、内部のLiイオンが負極表面上で金属化(析出)することがある。Liが析出すると電池の容量や出力を低下させるだけでなく、故障の要因ともなる。このため、LiBのリユースや長期使用では、Liが析出して劣化していないかどうかを確認することが欠かせない。

従来、LIBの劣化診断は、Liイオンの動きに着目した抵抗値の変化などを計測して行っていた。しかし、この手法ではLi金属の析出度合いを直接判断できないという課題があった。

このため同社は、Liイオンの動きではなく、金属材料の特性の変化に直接的な影響を与える電子の動きに着目。電子を高周波で流すと電子電流が通流経路の縁に集中する「表皮効果」という現象を利用すれば、負極表面という電極の縁に析出したLi金属を特異的に検出できると考えた。

研究グループは電子の流れを抽出するため、さまざまな条件で実験を繰り返し、特定の高周波帯域で「イオンの動きや端子など構造体による影響が小さく、電池内部の電子の動きを強調して捉えられる」という性質があることを発見。この高周波帯域では、負極表面にLi金属が存在すると、電子が流れやすくなる方向に電池内部の抵抗が変化することがわかった。

研究グループは、この抵抗値の変化を捉えられるセンサを試作し、Li金属の析出をモニタリングできるかを検証した。その結果、非破壊、リアルタイムでLi金属析出を容易に計測できることを確認した。

同社は、将来のLiBのリユース促進に貢献するとともに、Liの析出を監視するためのセンサとしての応用も期待できるとしている。

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世界初、リチウムイオン二次電池を長期利用するための健全性診断技術を開発~リアルタイムかつ非破壊でリチウム金属析出の有無を診断することに成功~ | お知らせ | 株式会社 豊田中央研究所

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