早稲田大学、東京大学の研究チームは2018年4月12日、千葉工業大学、海洋研究開発機構、東亜建設工業、太平洋セメント、東京工業大学、神戸大学と共同で、東京都の小笠原諸島・南鳥島周辺海域に世界需要の数百年分に相当する莫大なレアアース資源が存在することを明らかにしたと発表した。さらに、レアアース濃集鉱物を効率よく回収する技術も確立した。
レアアース元素は、再生可能エネルギー技術やエレクトロニクス、医療技術分野など日本が技術的優位性を有する最先端産業に必須の金属材料だ。一方、レアアースの世界生産は中国の寡占状態にあり、供給構造の脆弱性が問題となっている。新興国を中心に今後もレアアースの需要が伸び続けることが予測される中、日本の排他的経済水域内(EEZ)におけるレアアース泥の分布とレアアース資源量の正確な把握が望まれていた。
今回の研究では、2014年から2015年までに実施された計3航海で採取された23本の堆積物コアから、新規に573試料の化学分析を行った。さらに、すでに公表されていた104試料のデータを加え、陸上の鉱床評価にも用いられているGISソフトウェア(Geographic Information System Software)である「ArcGIS」により、南鳥島の南方沖約250kmの超高濃度レアアース泥分布域における深海堆積物中のレアアース濃度分布を初めて可視化するとともに、資源量の把握を行った。
特に、北西に位置する極めてレアアース濃度の高い海域では、このエリア(約105km2)だけでもレアアースの資源量は酸化物換算で約120万トンに達し、最先端産業の中で特に重要なジスプロシウムが現在の世界消費の57年分、テルビウムが同32年分、ユウロピウムが同47年分、イットリウムが同62年分存在するという。さらに有望エリアの全海域(約2500km2)を合算すると、その資源量は世界需要の数百年分に相当する1600万トンを超えることが明らかになったとしている。
さらに同研究チームは、レアアースの大半が含まれる生物源のリン酸カルシウムが、レアアース泥中の他の構成鉱物に比べて大きな粒径を持つことに着目し、ふるいを用いた粒径分離によってレアアース泥中の総レアアース濃度を最大で2.6倍にまで高めることに成功した。粒径分離によって泥の重量が大幅に減少するため、海上への揚泥や製錬のコストの削減も期待できるという。
この成果により、これまで基礎研究にとどまっていた海底鉱物資源の活用が検討段階になり、レアアースを活用したさまざまな最先端産業の創出が期待できるとしている。