東北大学は2018年10月15日、金沢大学、福田結晶技術研究所と共同で、Fe-Ga単結晶の大型化と低コストで板状成形する技術の開発に成功したと発表した。
現在、IoT用の無線通信モジュールには、寿命があるボタン電池や乾電池が電源として利用される場合が多い。それらの電池類の交換が必要なことが、IoT普及の阻害要因の1つとなっている。電池を代替する手段として、振動発電が注目されており、その材料として、優れたエネルギー変換効率を有するFe-Gaの単結晶板を利用する方法が注目されている。しかし、製造コストが高いことが課題であった。
今回の開発では、シリコン製造などでも用いられるチョクラルスキー法によって、従来はなかった直径約10cm直胴10cmの巨大なFe-Ga単結晶合金の製造に成功した。チョクラルスキー法は、非常に多くのパラメータの最適化が必要で、結晶の大型化には熟練と工夫が必要だ。そのため、今回は特に温度勾配を制御する周辺保温材の配置を工夫することで結晶化進行を促進させ、単結晶の大型化を実現した。
さらに、この大型単結晶を、砥粒などの条件を最適化したマルチワイヤーソーを用いて低コストで板状に成形する技術を確立。従来放電加工機でのウエハー1枚の作製に丸1日要していたところ、単結晶のインゴットから板材までの加工を、数時間~半日程度で可能になることを確認した。
今回の開発によって、単結晶板製造および板状成形の低コストでの量産の実現が可能となり、磁歪振動発電技術の実用化への道筋がついたという。
今回開発した単結晶板を使用した発電デバイスなどは、2018年10月17日から19日まで幕張メッセで開催される「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」に出展される予定だ。