MIT、二酸化炭素を使う新型リチウム二次電池を開発

マサチューセッツ工科大学機械工学科のBetar Gallant准教授らは、発電所などから排出される二酸化炭素を取り込んで稼働する新型リチウム二次電池を開発したと発表した。この技術を用いれば、二酸化炭素の回収と電気エネルギーへの変換を1つのデバイスで行うことができる。研究成果は『Joule』に論文「Tailoring the Discharge Reaction in Li-CO2 Batteries through Incorporation of CO2 Capture Chemistry」として2018年9月21日に発表されている。

二酸化炭素は電気化学反応性に乏しいため、高電圧操作によって反応性を上げる手法が取られるが、高コストかつ水中で行われるために生産物の回収率も良くないという課題がある。そこで、Gallant准教授らは、水を使わないリチウム空気電池の電気化学反応に着目し、電池に使われる電解質について詳しい研究を進めた。

炭素電極のみを使用して二酸化炭素を電気化学変換する場合、二酸化炭素捕捉剤としてアルキルアミンを溶液に添加し、二酸化炭素を事前に活性化することがポイントだったという。「液体であるアミンと非液体である電池電極を組み合わせることは初めての試みでしたが、電気化学的に有効に働き、放電電圧を増加させ、二酸化炭素の変換を継続できるようになりました」と、Gallant准教授は説明している。

現在利用されている二酸化炭素貯留(carbon capture and sequestration:CCS)は発電所から排出される二酸化炭素を化学吸収し、その後に地下に貯蔵、あるいは化学的燃料等へ変換するという二段階プロセスだが、今回開発された手法は、発電所の廃棄物発生プロセスに対する直接的なアプローチといえる。

また、この新たなリチウム二酸化炭素電池の追加実験では、リチウム空気電池にも匹敵する電圧と容量を達成することが示されている。ソウル大学のKisuk Kang教授は「本研究は金属空気電池の化学と二酸化炭素を補足する化学の融合がもたらした成果で、電池のエネルギー密度と二酸化炭素補足効率を高めることに成功した」と評価している。

今後研究チームは、実用化に向けての課題に取り組む予定だ。大きな課題は電池のサイクル寿命が10回の充放電サイクルに制限されている点だ。アミン溶液は反応過程で消費されることなく、分子促進剤として働くことが確認されていることから、まずは二酸化炭素の取り込みだけで電池が継続的に運用できることを目指すという。最終的には、発電所から排出される二酸化炭素の補足と、二酸化炭素が電気化学変換され電池に供給される一連の統合されたシステムの開発を目標としている。実用化までには数年が必要だが、温室効果ガス排出削減のための世界的目標を達成する上で不可欠な技術のひとつになるだろうと期待されている。

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