東京大学は2019年1月7日、自由な形に切り取り可能なワイヤレス充電シートを開発したと発表した。
従来、ワイヤレス充電用のコイルをさまざまな製品に組み込む際は、その製品の形状などに合わせてコイルアレイの設計や実装する方法が一般的だ。しかしこの方法では、その都度製品形状に合わせて、しかも磁気的干渉を考慮したコイルの配線、設計が必要なため、高度な知識と多くの時間、労力を必要とした。
今回東京大学の研究グループが開発したワイヤレス充電シートは、ユーザーが自由な形状に切り取ってさまざまな製品などに貼り付けるだけでワイヤレス充電ができるものだ。
従来のワイヤレス充電シートでは、コイルアレイをマトリックス状に配線したものが多く、切断すると縦横に接続されたコイルの一部が機能しなくなる。新たに開発した充電シートは、電源をシート中央に配置。H木型配線によって中央から外側に向かって配線することで、シートを切断してもコイルアレイに電流が行き渡る仕組みだ。加えて、H木型配線では電源から各コイルまでの配線の長さを等しくできるために、高周波回路特有の、電源から見た際の各コイルのインピーダンスのばらつきも抑えることができる。
さらに、隣り合うコイル同士が同時にオンにならないように、時分割給電方式を採用。コイルを密接に配置しても、コイル間の磁気的干渉を回避することに成功した。
開発したシートの実証実験として、研究グループは、大きさ400×400mmのフレキシブル基板上に重さ82gのワイヤレス充電シートを作製。数百kHz~数MHzの磁界を用いて、最大5W程度までの電力を送ることに成功した。
今回の開発によって、家具や鞄、衣服などの生活用品に手軽にワイヤレス充電機能を持たせることができるようになるという。研究グループは今後、印刷エレクトロニクス技術を活用して、シート内の配線と素子を一括で印刷する研究に取り組むとしている。