理研、水/酸/アルカリ性水溶液中でも自己修復/形状記憶性能を示す機能性ポリマーを開発――さまざまな環境で自己修復できる実用材料の開発に期待

理化学研究所(理研)は2019年2月7日、同研究所の共同研究チームが、乾燥空気中のみならず、水や酸、アルカリ性水溶液中でも自己修復性能や形状記憶性能を示す新しい「機能性ポリマー」の創製に成功したと発表した。今回の研究結果は、今後の自己修復性材料の設計や開発に重要な指針を与えるものになるという。

損傷から自己修復できる材料の開発は、学術的にも実用的にも極めて重要だ。従来の自己修復性材料には、水素結合やイオン相互作用などを活用して精巧に設計されたものが知られているが、それらの相互作用は水や酸などで壊れやすいため、従来の材料は変化に富む実際の自然環境ではほとんど機能しないことが課題となっている。また、現状ではこれらの材料は、その精巧な分子設計のために多くの場合は合成に多段階を必要とし、実用化に向けた大量合成が困難となっている。

今回、共同研究チームは過去の研究背景を踏まえ、希土類金属触媒を用いたエチレンとアニシル基を持つプロピレン類との共重合反応の開発に取り組んだ。独自に開発した希土類触媒を用いることにより、エチレンとアニシルプロピレン類との精密共重合に初めて成功し、得られた新しいポリマーが伸び率約2200%と優れたエラストマー物性を示すだけではなく、自己修復性能を持つことを明らかにした。

この新しいポリマーは、外部から一切の刺激やエネルギーを加えずとも、大気中だけではなく、水、酸やアルカリ性水溶液中でも自己修復性能を示す。さらに温度制御によって形状記憶材料として機能し、形状固定率と形状回復率は99%と優れた特性を示し、繰り返し変形させた際にも、機能低下は見られなかった。今回の研究成果は、さまざまな環境で自己修復可能で、実用性の高い新しい機能性材料の開発において大きな貢献が期待できるとしている。

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