- 2018-10-29
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- リチウムイオン二次電池, 大阪府立大学, 正極活物質, 熱安定性評価技術, 示差走査熱量(DSC), 群馬大学, 透過型電子顕微鏡(TEM), 電解液系リチウム電池用電極材料
群馬大学は2018年10月26日、大阪府立大学と共同で、電解液系リチウム電池用電極材料の熱安定性評価技術を確立し、その発熱反応のメカニズムを解明したと発表した。
近年、リチウムイオン二次電池は、大型化や高エネルギー密度化により、電気自動車などの車載用電源としての応用が期待されている。しかし、一般的なリチウム電池には、可燃性の有機溶媒が用いられているため、発熱/発火するという問題があった。そして、その要因についても、電解液や活物質の酸化分解反応など、諸説提案されているものの、詳細は未だに解明されていなかった。
そこで、研究グループは、電極として正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(以下、NMC)からなるNMC電極複合体、電解液にエチレンカーボネートなどを含む混合溶媒に電解質LiPF6を加えたものを使用。充電後に加熱し、示差走査熱量(DSC)測定することで、250℃と300℃付近に大きな発熱反応が存在することを確認した。
そして、これら発熱反応の要因を明らかにするため、240℃、290℃、330℃に加熱処理したNMC正極複合体に対し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。
結果、290℃のNMC正極複合体では、電解質LiPF6に構造変化があり、LiFナノ結晶が多数析出していることを発見した。これは、LiPF6の一部がLiFに分解していることを示唆しており、250℃付近の発熱反応にはLiPF6の分解反応(LiPF6→LiF+PF5(gas))に伴う発熱が関与していることが分かった。
一方、330℃のNMC正極複合体では、正極活物質NMCが微粒子化していることを発見。その構造変化には、酸素脱離が伴うことが予想されるため、300℃付近の発熱反応には、脱酸素による有機溶媒の酸化に伴う発熱が関与している可能性があるという。
研究グループは今後、電気化学特性や熱的安定性についても評価を進めるとしている。また、酸素脱離についても詳細な検討を進めるため、ガス分析なども取り入れる予定だ。