高移動度のn型高分子トランジスタを開発――全有機高分子型のデジタル回路や熱電変換素子、太陽電池への応用に期待 東工大

東京工業大学は2019年2月27日、高分子トランジスタとしては世界最高レベルの電子移動度7.16cm2/V-1s-1を示す電子輸送型高分子トランジスタの開発に成功したと発表した。

有機半導体高分子の実用化には、高い移動度を示すことが一つの目安になるとされている。現状、正孔輸送型(p型)では、10cm2/V-1s-1を超える高い移動度が達成されている。しかし、電子輸送型(n型)では、隣接モノマー間で原子が衝突してしまう立体障害のため、十分な結晶性薄膜を形成できていなかった。そのため、高い平面性を有する電子吸引性モノマーからなる高分子の合理的な設計指針が求められていた。

そこで、研究グループは、非常に強い電子吸引性モノマーを2つ組み合わせたn型の有機半導体高分子を合成。さらに、分子内水素結合を利用することで、立体障害を回避して高い平面性を得ることに成功した。

また、得られた高分子薄膜をX線回折で測定し、3.40Å(オングストローム)の非常に小さい分子間距離を有する結晶性薄膜であることを確認した。1ヵ月以上大気下で保存しても明確な劣化がないこと、引加電圧に対しても優れた安定性を示すことも確認している。


今回の成果は、高い移動度を持つn型半導体高分子の明確な設計指針を与えており、他のモノマー構造にも適用できる汎用性を持つという。また、高い安定性も確認しているため、p型半導体高分子と組み合わせることで、全有機高分子型のデジタル回路や熱電変換素子、太陽電池などに応用できると説明している。

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