二酸化炭素を1日で10%削減する人工植物を開発――変換効率は本物の10倍

イリノイ大学の研究チームが、太陽光を用いて水と二酸化炭素から酸素と資源を人工的に生み出す「人工光合成技術」の実用化を前進させる新技術を開発した。開発技術を用いれば、本物の葉が光合成で炭水化物を生み出す10倍の変換効率で、二酸化炭素から一酸化物を生成できるという。研究成果は2019年2月5日の『ACS Sustainable Chemistry & Engineering』に掲載されている。

従来の人工光合成技術では、研究室で圧縮された純粋な二酸化炭素からでしか酸素と資源を生成できなかった。しかし、「人工光合成技術を現実の世界で活用するには、空気や排気ガスなどの希薄な供給源から二酸化炭素を取り込む必要がある」と、研究チームのMeenesh Singh准教授は述べる。

研究チームは、第四級アンモニウム樹脂の半透膜で作られた透明なカプセルで人工葉を包み、カプセル内を水で満たした。カプセルが太陽光で温められると、カプセル内の水は蒸発し膜を通って外に放出する。蒸気は膜を通過し外部に出る際、空気中から選択的に二酸化炭素をカプセル内部に取り込み、カプセル内の人工光合成ユニットへと供給する。この人工光合成ユニットは、二酸化炭素を一酸化炭素に変換する触媒でコーティングされた吸光素材で、一酸化炭素は様々な合成燃料を生産するための基材となる。

1.7m×0.2mのサイズで360枚の人工葉を設置した場合、1日0.5tの一酸化炭素が生成できる。500平方メートルの範囲に設置することで、周囲100m以内の二酸化炭素を1日10%削減できるという。Singh准教授は「特殊な膜で包まれた人工葉は、研究所の外でも天然の葉と同様に機能できる」と、その成果を説明している。

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Assessment of Artificial Photosynthetic Systems for Integrated Carbon Capture and Conversion

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