- 2019-3-9
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- JGR Planets, NASA, カッシーニ, シリカ(SiO2), チャンドラヤーン1号, ディープインパクト, ヒドロキシル(OH)
NASAのディープインパクトやカッシーニ、インドのチャンドラヤーン1号など様々な探査機によって、月に水が存在することは知られている。しかし、月で水が生成される過程はまだ分かっていない。彗星の衝突もそのひとつと考えられるが、近年では太陽風と呼ばれる太陽からの荷電粒子の流れがその主な原因と分かってきた。
これまでの研究から、太陽風中の水素の量、月の大気(外気圏)の厚み、月表面のヒドロキシルの量が分かっている。NASAの研究チームは、これら3つの量が物理的にどのように絡み合っているか導き出し、太陽風が月の表面に激しく降り注ぐことで、水の素となるヒドロキシル(OH)が作られるというシミュレーションを作り上げた。研究結果は、2018年12月29日付けの『JGR Planets』に掲載されている。
このシミュレーションによれば、太陽風中の水素イオンは月表面の電子と結合して水素原子になる。また、絶え間なく吹き付ける太陽風は月の岩石や土壌に含まれるシリカ(SiO2)のケイ素と酸素の結合を断ち切る。不安定となった酸素は、やってきた水素原子と結合し、ヒドロキシルとなるという。
同時に、太陽の照射量が多く温度が高い赤道付近では水素原子が気体となって外気圏に放出しやすく、温度が低い極付近では月表面に蓄積しやすいことも明らかとなった。これは、観測地点によって水素の量が違っていた理由を説明できる。
残念ながら、ヒドロキシルがどのようにして水になるかは未だ解明されていない。しかし、今回の解析で、月は水の素を大量に有する化学工場のようなものだと分かった。人類が月へ移住する計画がまた一歩現実に近づいている。