熱電材料の発電性能向上で400℃までの温域で利用可能に――機械学習で最適な組成を発見 NIMSと東大

機械学習を取り入れた材料研究開発の流れ(左)機械学習を取り入れることにより中温域での出力因子を40%程度向上させることに成功(右)

物質・材料研究機構(NIMS)と東京大学は2019年3月19日、従来の実験では探索範囲外だった最適な組成(元素の混合比)を機械学習で発見し、アルミニウム、鉄、シリコンといった汎用元素のみで作られた熱電材料の中温域(200℃~400℃)の発電性能を、従来比40%向上させることに成功したと発表した。

熱電材料はわずかな温度差から発電できるため、センサーやウェアラブルデバイス用の小型自立電源として注目されている。一方、材料となる元素の資源量が少ない、毒性がある元素が使われている、使用可能な温度域が狭い――などの課題があった。それに対してNIMSはすでに、アルミニウム、鉄、シリコンといった無害な汎用元素のみから、室温から200℃までの温度域で使用できる熱電材料を開発していた。

今回の研究では、機械学習(ベイズ最適化)により、NIMSが開発したアルミニウム-鉄-シリコン熱電材料において、400℃までの利用を可能とする新組成を発見した。組成、出力性能、温度といった実験データを学習させた結果、ある組成が中温域(200℃~400℃)での出力特性を向上させるという予測が導かれたという。実際にその組成で熱電材料を合成したところ、従来比40%もの出力性能の向上が確認できた。その組成の前後の組成では出力性能が減少するため、最適な組成が発見されたと言える。

この研究で新たに発見された組成は、普通の実験では探索外だったものだ。これを機械学習が予測し、性能向上への新たな道筋を見出した点に、今回の研究の意義はある。NIMSらは「今後は実験のみでは探索が困難な、より複雑な組成を有する新規材料の発見にも期待がもたれる」と今後の展望を述べている。

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