- 2019-4-1
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- MIT, Nature Climate Change, Peter Irvine, アルベド(albedo:入射光に対する反射光の比), ジオエンジニアリング(気候工学), ソーラージオエンジニアリング(solar geoengineering), ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクール(SEAS), プリンストン大学, 地球温暖化現象
人類の未来にとって、大きな脅威となっている地球温暖化。これを技術で解決しようとしているのが「ソーラージオエンジニアリング(solar geoengineering)」だ。ジオエンジニアリング(気候工学)とは、地球のアルベド(albedo:入射光に対する反射光の比)を減らす、すなわち人工的な手段で太陽光を減らすことによって、地球温暖化現象を打ち消すことを目指すものだ。
ジオエンジニアリングに関する大きな誤解は、大気のCO2レベル上昇による温暖化を、産業革命以前の水準にまで低下させるという前提だ。例えばそのために必要な大量のエアロゲルを大気中に散布すれば、新たな気候問題を誘発し、特に降雨パターンを特定の地域で悪化、ハリケーンの多発などが起きる恐れがある。
ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクール(SEAS)が、MITおよびプリンストン大学と共同で行った研究は、もしジオエンジニアリングを地球の温度上昇を半減させるためだけに使うなら、気象の広域での悪化を招くことなく、世界に利益をもたらすかもしれないことを示した。研究論文は2019年3月11日付けで『Nature Climate Change』誌に発表されている。
研究者達は最新の高精度モデルを使い、豪雨と熱帯低気圧をシミュレートした。その結果、彼らはジオエンジニアリングで温暖化を半減すれば、地球のあらゆる場所を冷やすだけではなく、多くの場所で水の可用性の変化と極端な降雨量を緩和し、ハリケーンの強度の増加の85%以上が相殺されることを見い出した。モデルによれば、気候変動を悪化させる影響があるのは、陸地の0.5%未満とみられている。
論文の筆頭著者のPeter Irvine特別研究員は、「以前の研究は、ジオエンジニアリングによる勝者と敗者を生み、いくつかの地域は甚大な被害を被ることを示唆していた。ところが今回の試算では、どの地域においても顕著なリスクなしで気候リスク全体を大きく低下できることを明らかにした」と、研究成果を評価している。