積分方程式を解けるメタマテリアルデバイスを考案――高速アナログコンピューターに応用できる技術

積分方程式を解くことのできるメタマテリアルデバイスが考案された。マイクロ波を用いた概念実証用デバイスは、約2平方フィートの広さで、幅が波長の8倍、長さが波長の4倍である。

ペンシルバニア大学の研究チームが、積分方程式を解くことのできるメタマテリアルデバイスを考案した。入力パラメータにより符号化された入射電磁波が、積分方程式の核函数を機械的に構造化したメタマテリアルによって処理され、符号化された解が出力される。デジタルコンピューターよりも早く、しかも少ない電力で作動するため、将来的に高速アナログコンピューターに活用できる技術として期待される。研究成果は、2019年3月22日の『Science』誌に公開されている。

メタマテリアルは、電磁波の波長よりも微細な機械的な構造を利用して、物質の電磁気学的な特性を人工的に制御した疑似物質だ。同大応用科学工学部のNader Engheta教授は、積分方程式を解くことのできるメタマテリアルを設計する「フォトニック微積分(photonic calculus)」にチャレンジしている。

今回研究チームが、「スイスチーズ」と表現する空洞を含む複雑なメタマテリアル構造に組み込んだのは、第二種フレドホルム積分方程式として知られる、多様な分野で使われている普遍的な計算方法だ。例えば、コンサートホールの音響を適正化するとき、ホールの形状や壁材料の特性などの特徴を、積分方程式の核函数として予め定めることで、楽器の音源の位置および大きさを変動入力として、ホールの任意の場所における音量を計算することができる。

研究チームは、この積分方程式の中核となる核函数を組み込んだ、ポリスチレン・メタマテリアルをCNC工作機械により成形した。システムに入射する波動特性を変えることによって、音源に関する入力を変化させることができ、「未だ概念実証の段階だが、電子デバイスよりも著しく早い数百ナノ秒で、積分方程式の解を得ることができた」と、Engheta教授は説明する。

今回は概念実証モデルとして、波長が長く、デバイスを大きくできるマイクロ波を用いたが、この原理は、波長の短い光にスケールダウンできる。いずれはマイクロチップに埋め込むことで、デジタルコンピューターよりも何桁も早く、少ない電力で作動するアナログコンピューターが実現できると期待されている。

ペンシルバニア大学で1945年に開発されたデジタルコンピューター「ENIAC」の登場により、忘れ去られることとなったアナログコンピューターが、再び同大学の技術で脚光を浴びることになるかもしれない。

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‘A Swiss cheese-like material’ that can solve equations

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