大阪大学と東北大学は2019年4月17日、室温近傍で時々刻々と相転移が進行する新しい相転移「無拡散等温オメガ変態」が存在することを実証し、その機構を解明したと発表した。
航空機などの構造用材料や生体医療用材料に欠かせないチタン合金では、オメガ変態と呼ばれる、体心立方構造から六方晶構造のオメガ相への相転移が生じる。オメガ変態の制御は、チタン合金の材料組織や力学特性の制御において重要とされ、継続的な研究が続けられてきた。
一方、オメガ変態には、溶質原子が拡散せず瞬時に相転移する「非等温オメガ変態」と、溶質原子の拡散を伴って約250℃以上の温度で時々刻々と相転移が生じる「等温オメガ変態」という2つの相転移モードの存在が知られていた。
研究グループは今回、溶質原子の拡散が生じないにも関わらず、室温近傍の温度で時々刻々とオメガ変態が生じる無拡散等温オメガ変態が存在することを実証。その相転移機構を世界で初めて明らかにした。
さらに、無拡散等温オメガ変態が、熱平衡状態における合金組成のゆらぎが凍結されることで形成された数ナノメートルの局所的な不安定領域で起こる特異な相転移であることを明らかにした。そのため、平均的な合金組成によって決まる巨視的な現象を取り扱うこれまでの相転移論では、無拡散等温オメガ変態は説明できないという。
研究グループは今後、この成果を利用したナノ組織制御法が確立されることで、高強度や低弾性率等を有する生体医療用および構造材料用のチタン合金の開発が期待されるとしている。