磁場を相殺する新構造のレンズを組み込んだ電子顕微鏡を開発――磁性材料の原子観察に成功 東大ら

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東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構と日本電子は2019年5月24日、試料上の磁場を打ち消す新構造の対物レンズを組み込んだ電子顕微鏡を開発したと発表した。これを用いて、ほぼ磁場のない状況で原子の直接観察に成功するとともに、磁性材料の原子観察が可能であることも示したという。

今回の研究は、東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構の柴田直哉教授と日本電子との共同研究チームによるものである。柴田教授らはこのたび、磁場を使って像を拡大する対物レンズを上下2つに組み合わせた全く新しい構造のレンズを試作し、そのレンズを搭載した電子顕微鏡を開発した。

電子顕微鏡は現行の全顕微鏡の中で最も高い分解能を持つ。しかし、電子顕微鏡で原子レベルの観察をするには、試料を強磁場の中に入れる必要があった。そのため、磁性材料を電子顕微鏡で原子観察することは極めて困難だった。磁性材料は磁場の影響を受けるからだ。

新開発の対物レンズでは、試料は上下のレンズの間に挿入して観察するのだが、レンズ間で発生する磁場が上下逆向きなので、試料の位置で磁場同士が打ち消し合う。その結果、レンズ内部の磁場強度は0.2mT以下となる。この磁場強度は、通常の対物レンズ内部の磁場の1万分の1以下に相当する。

原子分解能磁場フリー電子顕微鏡(MARS)

この対物レンズと最新の収差補正装置(DELTA型コレクター)を組み合わせ、原子分解能磁場フリー電子顕微鏡を開発した。この装置の性能評価のために窒化ガリウム(GaN)単結晶を観察すると、Ga-Ga原子間の距離がわずか92pmしか離れていないにも関わらず、その2つの原子が明瞭に分離していることが観察できた。この結果から、最低でも92pmの空間分解能があることが明らかとなった。

次に、典型的な軟磁性材料である電磁鋼板の原子を観察。軟磁性材料は強磁場中に入れると変形するため、電子顕微鏡による原子観察は困難だった。ところが、新開発の電子顕微鏡で観察したところ、磁性のない材料と同じくらい容易に原子構造を観察できた。原子観察が最も困難な材料の一つである電磁鋼板で原子観察に成功したことは、あらゆる磁性材料の原子観察が可能になったことを意味しているという。

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