有機ELの新たな発光機構を発見――三重項励起子を低電圧で選択的に形成 理研と東大ら

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理化学研究所(理研)は2019年6月6日、東京大学らとの国際共同研究グループが有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイスにおいて重要な役割を担う三重項励起子を低電圧で選択的に形成する新たな機構を発見したと発表した。この研究成果は、有機ELデバイスのエネルギー効率の向上につながることが期待できるという。

有機分子に電流を流すことで発光させる有機ELは、スマートフォンの画面に応用されるなど、次世代ディスプレイや照明技術として注目されている。有機ELでは、電極から注入されたマイナスの電荷を持つ電子とプラスの電荷を持つ正孔が、有機分子内で互いに束縛されて「励起子」を形成し、その形成された励起子が発する光を利用している。そのため、発光源となる励起子の形成は有機ELデバイスの動作原理の中核をなす物理現象であり、新たな励起子形成方法の発見は有機ELデバイスの革新につながる。

有機分子からの発光には、一重項励起子(S1)が発光する「蛍光」と三重項励起子(T1)が発光する「りん光」の2種類がある。現在はS1に比べてT1の形成効率が高いため、りん光を用いた有機ELデバイスが主流となっているが、りん光を用いた有機ELデバイスでは蛍光を利用したデバイスより駆動電圧が高くなることや、青色のりん光材料が商用化できていないという問題があった。

今回、国際共同研究グループは、独自に開発したナノメートルスケールの空間分解能を持つ走査トンネル顕微鏡(STM)をベースとした発光分光装置を用いて、マイナスに帯電した分子の発光特性を単一分子レベルで詳しく調査した。その結果、分子内に余剰電子が存在することで電子間の相互作用が働き、スピン選択的な電子伝導が生じてT1が低電圧で選択的に形成されることを突き止めた。

実験の概念図とPTCDAのSTM発光スペクトル

今回の研究は、T1を選択的に形成できることを示した。これは不対電子が分子中に存在することで生じる交換相互作用であり、そのような有機ELデバイスを設計/開発すればエネルギー効率が高いデバイスが作製できることを示している。さらには、T1を低電圧で形成できることから材料選択の幅が広がり、これまで実現できなかった青色のりん光材料を実現できる可能性があるとしている。

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