北海道大学は2021年11月19日、同大電子科学研究所の研究グループが、電気スイッチ一つで絶縁体を超伝導体に繰り返し切り替えることに成功したと発表した。研究成果は2021年11月4日付で『ACS Applied Materials & Interfaces』誌に掲載された。
高温超伝導体であるイットリウム・バリウム・銅複合酸化物(YBa2Cu3O7-δ(0 ≤ δ ≤ 1):δ=酸素欠損量/以下、YBCO)の導電性は、酸素含有量によって絶縁体から超伝導体まで大きく変化する。この性質を利用して絶縁体と超伝導体を切り替える方法が試みられ、これまでに電解質を用いて電気的に酸素含有量を調節する方法が提案されているが、液漏れを防ぐために素子を密閉する必要があり、応用する際の課題となっていた。
研究グループは、イオン液体や電解液の代わりとして、固体電解質であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の基板の上にYBCO薄膜を作製。空気中で300℃に加熱し、両端に電圧を印加することで、電気化学的にYBCO薄膜中の酸素欠損量を変化させた。
今回の研究では、絶縁体を超伝導体にする場合には-10Vを、絶縁体にする場合には+10Vを印加し、保持時間を調節することで酸素欠損量を制御した。その結果、酸素欠損量を0.069から0.87 まで変化させることができ、酸素欠損量が減少するにしたがって超伝導転移温度が上昇することが分かった。また、酸素欠損量0.28以下で超伝導転移が起き、酸素欠損量が0.87になると、温度が低下するにつれて電気抵抗が増加する絶縁体の挙動を示すようになることも分かった。
このような絶縁体と高温超伝導体との相互切り替えは繰り返し行うことが可能で、電解液を使わないため液体が漏れる心配もない。研究グループは、電気スイッチ一つで絶縁体から高温超伝導体に繰り返し切り替えられる特性を生かした新しいデバイスへの応用が期待されるとしている。