準2D構造を持つ透明な金属薄膜の生成に成功――新たな光電子デバイスにも期待

MoS2の単原子層を接着層として、連続的な準2D金薄膜を始めて生成 Illustration. Quasi-two-dimensional gold. Credit: Ella Maru Studio

モスクワ物理工科大学MIPTの研究チームが、層状の結晶構造を持たない金属である金(Au)に対して、二硫化モリブデン(MoS2)の単原子層を接着層として用いることで、厚さ数原子という準2D構造を持つ連続的薄膜を生成することに成功した。極めて薄くかつ高い導電性を持ち、特異な光学特性を備えることから、透明な光電子デバイスとして斬新で有用な応用が期待される。2019年4月30日の『Advanced Materials Interface』誌に研究論文が公開されている。

2D材料としてよく知られているグラフェンは、炭素の単原子層から構成されるハニカム状のシートだ。その斬新な物理特性から、医学やエレクトロニクス、航空宇宙など、広範囲な応用が研究されている。さらに、グラフェンの出現以来、100以上の同様な材料が発見されており、層間の結合力は弱いが、2D平面内では強い一体性を持つ層状2D結晶の研究分野は広がりをみせている。

一方、金や銀、銅など多くの金属材料は、層状の結晶構造を取らないため、2D薄膜の作成は検討されてこなかった。しかしながら金属は高い導電性を備えているため、もし厚さ10nm以下の2D薄膜が生成できれば、柔軟かつ透明な電極など、光電子デバイス分野で大きな可能性が期待できる。

金属を一般的な成膜手法である化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposiotion)技術を用いて蒸着させると、金属粒子は基板に付着しナノサイズの島を形成する。島は徐々に成長して、互いの間の隙間を埋めるが、厚さが20nm以上にならないと、優れた導電性を有する連続的な薄膜を生成できず、2D薄膜の生成は難しかった。

MIPTの研究チームは、他の2D材料の上であればCVD技術でも2D金属を堆積できるのでは、という仮説のもと、種々の2D材料の上に10nm以下の連続的な2D金薄膜を生成することにチャレンジした。基板とする2D材料の一番の候補はグラフェンだが、金のグラフェンに対する濡れ性は非常に低く、その結果、金は柱状にしか堆積せず、連続的な薄膜は得られなかった。

次に遷移金属ジカルコゲナイドに注目、特に金と安定した結合が得られるMoS2を試みた。MoS2の単原子層で被覆したシリコン基板を用いたところ、優れた導電性を持つ、厚さ3~4nmの連続的な金薄膜を生成することに成功した。また、偏光解析分光法を用いて光学的性質を調べたところ、透明な光電子デバイスとして、多くの有用な応用も期待できることが分かった。研究チームは、医学分野でも神経系の接点と成り得る超極薄の電極として使える可能性があると説明している。

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New Flatland material: Physicists obtain quasi-2D gold

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