水からオイルを絞り出す――新たな薄膜フィルター開発のための新技術

Image courtesy of the researchers

油性の廃水をきれいにすることは、石油精製や食品加工、金属の表面処理を始め、多くの産業で必要とされる。未処理の廃棄物は、生態系にダメージを与えかねないが、流出してしまった油の除去や汚染水の浄化は、目詰まりや汚損を起こしやすい薄膜フィルターに頼る、極めて非効率なプロセスだ。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、この改善に向けて汚損しにくい、あるいは汚損しない薄膜フィルター材料開発に貢献する技術を開発した。研究論文は科学ジャーナル『Applied Materials and Interfaces』に掲載されている。

油性の汚染物質を取り除く方法は、油と水の相対的な量と油滴の大きさによって変わる。 乳化した油を除去する最も効率的な方法は、ごく小さい油滴もろ過できる薄膜フィルターを使うことだ。しかし薄膜はすぐに油滴で汚れてしまい、浄化には時間を必要とする。この汚損の過程を観察することは非常に難しく、汚染物質に対する、異なる薄膜材料や構造の評価は容易ではない。研究に携わった化学工学科のGregory Rutledge教授は、「薄膜フィルターの内部を観察することは非常に難しい。新しいタイプの薄膜を開発するために多大な努力が払われているが、フィルターが使われている状態で汚染水とどのように相互作用しているかは、容易には検査できない」と話す。これは、フィルターは可能な限り多くの薄膜面積を詰め込むように設計されていることも一因となっているようだ。

MITの開発した技術は、共焦レーザー走査型顕微鏡を使い、多数の微細繊維で構成される薄膜の油滴の拡散過程の三次元イメージを作る、というものだ。研究チームは、流体中の油性物質と薄膜フィルターの繊維に、別々の蛍光染料を用いてマーキングすることで、層毎に材料の深部まで走査することを可能とした。この手法は、生物学の研究で、サンプル中の細胞とタンパク質を観察するために使われていたが、油と繊維に対して応用されたことはなかったという。

Rutledge教授は、「これにより、フィルター内部の幾何学的配置を測って三次元モデルを作り、材料を特徴づけることができる。そして、異なる材料の繊維と異なる配置を使って効果を調べることができ、汚損をもっと良く理解できるようになる」と述べている。

研究チームはすでに、油と薄膜の間の相互作用は、使われる材料によって大きく異なることを実証している。これにより、石油流出事故などに威力を発揮する、より効率的な薄膜フィルターが開発されることが期待される。

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