農地をセンシングすることの難しさも――アグリテックが抱える課題とは、農業用ドローンの専用開発も [農業の未来を担うアグリテック]

メイテックネクスト東京営業部モビリティグル―プ 杉山直紀氏


~ 大きく注目を集めつつある「アグリテック」に関する最新事情をエンジニアリングの視点から読み解く~

本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストの代表取締役社長 河辺真典氏と、東京営業部モビリティグル―プの杉山直紀氏への取材を通じて、アグリテックの最新事情をお伝えしていく連載記事です。

第1回目の「日本の農業が抱える課題」に続き、今回は、新たな技術分野であるアグリテックについて、技術的な視点からの課題と動向について、お話を伺います。(執筆:後藤銀河)


――国が推進しているアグリテックですが、開発を行う企業にとっての課題はなんでしょうか?

[杉山氏]アグリテックで注力するエリアは、大きく分けて「生育」「収穫」になります。土壌の状態や生育の様子をモニターするために、ドローンやセンサーを使いますが、専用品の開発や調達に難しさがあるようです。

一例として、農業用ドローンの企画製造販売を手掛ける株式会社ナイルワークスでは、自動飛行のドローンをゼロベースから筐体、制御システム、生育監視システムを自社開発しており、自動飛行での農薬散布と生育監視を同時に実現しています。

搭載するカメラは、メーカーと共同開発した独自仕様のカメラを使用しています。また、センサーについても、複数種類を組み合わせて使用することで、高度な完全自動飛行を実現しています。

――農業用ドローンは、市販のドローンとは異なるのでしょうか。

[杉山氏]農薬散布をするためのマルチコプターは、一般的なドローンとは違う筐体設計が要求されます。具体的には、液体の農薬を効率的に散布するため、機体下部の空気の流れを計算して、どれ位散布するのかをモデルベースで開発したり、5~10kgにもなる農薬を運搬する必要があるため、高い機体強度も求められます。そのため、ゼロベースから専用ドローンを開発する必要があります。

これはセンサーも同じで、土壌の水分量を測定するセンサーとして、例えば工業プラントで使われている水分センサーを作っているメーカーが、屋外や土壌の中で使うことができるセンサーをすぐに販売できるかというと、簡単なことではありません。コストや量産化の問題もありますが、そもそも農業ではどのようなデータを測れば良いのかという実証部分が不足しているのです。

農業の見える化、農家が培ってきたノウハウの数値化が必要

――農業に関するノウハウがないため、どんな仕様のセンサーが必要なのか分からないということでしょうか。

[杉山氏]はい、農業従事者が長年培ってきたノウハウをどのようにデータ化するのか、事業の継承者が運用しやすい形で出していく必要があり、これが喫緊の課題になっています。

データ化については、産学官が連携して農業ICTを活用するプラットフォームを作っていこうという動きがあります。農業データ連携基盤(WAGRI)協議会を中心に、官公庁等が提供する気象や土地、地図情報などのパブリックな情報や、農家が保有しているプライベートな情報を集約、蓄積し、「WAGRI API」を通して連携・共有・提供するという取り組みが始まっています。

WAGRIのデータフロー。出展:https://wagri.net/

[河辺氏]スマートフォンのような小型デバイスにあれだけ多機能、高機能のカメラを搭載する技術があるのに、ドローンに搭載できるような耐候性を備えた高精細なカメラは無い。日本のメーカーでは作れないという訳ではなく、これまでこの領域に投資してこなかったというのが、我々から見た課題だと感じます。昨今の農地法改正により、徐々に企業の参入障壁が低くなり、農業の世界にもさまざまな企業が入ってくるようになりました。ようやく動き始めたということだと思います。

次回は、「アグリテックに関わるエンジニアに求められる技術」と題して、お話を伺います。

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河辺 真典(代表取締役社長)
生産技術エンジニアとして5年・リクルートエージェントで8年の勤務経験あり。
弊社のコンサルタントは、転職支援のノウハウと業界・技術知識の両方に長けております。
その上で、単に転職先を決めるだけでなく、
転職先でご活躍いただく「失敗しない転職」をご支援するように心がけております。


杉山直紀(メイテックネクスト 東京営業部モビリティグル―プ)
前職は輸入車ディーラーの営業を経験。入社後は一貫して企業向けの営業を担当。
現在は自動車業界向けのチームに所属。自動車業界と合わせドローン等の新しい技術領域のスタートアップ企業も担当。
日々新しい技術が生まれる中で、エンジニアの皆様が真に納得していただける転職を
サポートしたいと思います。



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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