燃料電池に関する求人への転職成功のポイントは?燃料電池求人の仕事内容や必要なスキル、転職市場動向を解説!

燃料電池とは

燃料電池とは、水素と酸素の化学反応を利用して発電する電池のことです。水素と酸素を生じさせる水の電気分解と逆の反応をすることで、水素と酸素から水をつくると同時に、電気と熱を発生させます。水素は再生可能エネルギーやバイオマスから取り出すことができ、発電の際には水のみを排出し、騒音も出ないため、環境に優しいエネルギーとして注目されています。

自動車、船舶などの移動体用電源や定置用分散型電源として燃料電池の開発が進められ、FCV(燃料電池自動車)や家庭用燃料電池「エネファーム」などが実用化されていますが、初期コストやランニングコストの高さが普及の妨げになり、耐久性や発電効率の向上といった課題も指摘されています。それでも水素は次世代エネルギーの本命とされ、日本では国策として水素社会実現に向けた課題解決に取り組んでいます。そのため、今後の市場規模の拡大に伴い、燃料電池に関連する求人が増えることが見込まれています。

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燃料電池の仕事内容は?

燃料電池に関する仕事には、研究開発や生産技術、製造、営業、施工、アフターサービスなどがあります。

研究開発では燃料電池の試作と評価、レポート作成といった業務があり、研究開発の対象は材料から基幹部品(電解質膜、セパレータ、電極触媒)にまでおよび、仕事内容は多岐にわたります。

生産技術では部材を作製するための金型や装置を開発し、最適な製造プロセスを構築します。品質を保証するための検査技術の開発業務も含まれ、検査ツールの作製から、画像処理、機械学習用のプログラミングまで、ハードウェアとソフトウェア両方の知識が求められます。

営業と施工に関わるエンジニアリング職は、施工要領と電力システムの観点で顧客への提案活動をします。燃料電池に太陽光や蓄電池を組み合わせるなど、顧客のニーズに応じたエネルギーマネジメントシステムの構築を提案します。

燃料電池に関する代表的な大手メーカーは?

燃料電池には、家庭用燃料電池のエネファームや産業用燃料電池、燃料電池車向けなどがあり、それぞれのカテゴリーで複数のメーカーが開発競争を繰り広げています。

日本国内ではエネファームを中心に普及が進みましたが、補助金の減額などの要因から、今後の伸びは緩やかになるとみられます。一方で、自動車メーカーによる新型車の投入や、燃料電池トラックやバス向け燃料電池の生産は増えており、燃料電池車の今後の需要拡大が見込まれています。以下に、各カテゴリーを代表する大手燃料電池メーカーを紹介します。

アイシン

家庭用燃料電池メーカーのアイシンは、発電効率が高いSOFC(固体酸化物形)エネファームで高いシェアを持ちます。電解質にセラミックスを用いるSOFCは動作温度が約700~1000℃と高いため、内部抵抗が低くなり出力時の電圧降下を低減し、約40~60%の高い発電効率を確保します。また、燃料ガスからの改質反応に燃料電池からの熱を有効利用することで、エネルギー効率の向上に寄与します。

アイシンは「2050年のカーボンニュートラル達成」に向けた取り組みを推進しており、2021年8月にカーボンニュートラル推進センターを発足し、同領域での開発体制を強化しています。現時点では、6~10年後に向けた産業向け燃料電池システムおよび水電解システムの開発人材を募集しています。

Bloom Energy Japan

米Bloom EnergyとソフトバンクグループのSBパワーマネジメントが出資して設立したBloom Energy Japanは、固体酸化物形燃料電池Bloomエナジーサーバーで発電した電力を販売しています。独自のSOFC燃料電池技術により、電力コストの低減と温室効果ガス排出量の削減を両立し、Google、ウォルマート、AT&T、コカ・コーラなどの大手企業が顧客に名を連ねます。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、燃料電池車「MIRAI」や燃料電池バス「SORA」の販売、燃料電池システムの販売、燃料電池関連の特許実施権無償提供などにより、水素社会実現に向けた取り組みを進めています。MIRAIは車体価格の高さと水素ステーションの少なさが要因となり、ほかのエコカーに比べると普及しませんでした。それでも着実に改良を重ねることでシェアの拡大を図っており、トヨタが培ってきた燃料電池技術はトラックやバス、船舶、鉄道など広範な分野でも実用化が進んでいます。

現時点では燃料電池開発の求人があり、仕事内容は燃料電池セルや電極の設計、燃料電池セルのセパレータや触媒の技術開発、生産技術、製造、SE(サイマルテニアス・エンジニアリング)活動などです。

燃料電池に関する求人の年収は?

エンジニア求人を豊富に保有するメイテックネクストによると、燃料電池の基礎研究・開発の採用は、駆動力源を早急にクリーンエネルギーに変更する必要のある「自動車・重工・大型機械業界」で盛んになっているそうです。

基礎研究フェーズでは材料分野の人材を採用対象とした案件が多く、電極・触媒の材料改良、メカニズム解明の求人が多い傾向です。一方、製品化のフェーズに移管して以降は、車両適合性を考慮して制御システムの開発を担うソフトウェアエンジニア、水素の流体制御やセル・スタック設計が可能な機械エンジニア、発電システムとして成立させるためのプラントシステムの設計技術を保有する人材にも、根強い採用ニーズがあります。また、「素材業界」でも市場拡大を期待して燃料電池部材の開発を積極的に行っており、定期的に素材開発、電池評価の技術を保有するエンジニアの募集があります。

カーボンニュートラル化の時流に乗って燃料電池の研究・開発に大型投資できるのは、安定した収益源と経営基盤を保有する業界トップクラスの企業です。年収帯は各社でバラツキがあるものの、30歳で600~650万円前後、30代半ばには750万~800万円前後の年収に届く企業がほとんどです。中途採用の場合は、現在の年収を考慮して大きく下回らないように入社時の待遇を決定することも多いため、年収が現在よりも大きく下落することはないと考えていいでしょう。

燃料電池の求人に興味のある人はこちら(メイテックネクスト 日本全国 ×「燃料電池」の求人一覧)

燃料電池の求人動向と将来性

日本政府は2017年12月に閣議決定した「水素基本戦略のシナリオ」において、2030年に燃料電池車を80万台、エネファームを530万台普及させるロードマップを策定しました。将来目指すべき姿として、技術改良と低コスト化した燃料電池車と燃料電池が、ガソリン車と従来のエネルギーシステムに取って代わる未来を描いています。まさに現在、水素社会の実現に向けた官民の取り組みが進められており、業界の垣根を超えた連携や開発競争が繰り広げられています。

燃料電池車の開発においては、材料の要素技術や製造プロセスなど、これまで自動車業界では使われていなかった技術が必要になり、別の業界のエンジニアが開発に携わる技術シフトが起きています。そのため、これまで別領域の仕事をしていた化学メーカーや機械、電気系のエンジニアなどが、日本の産業の中でも高度な技術分野である燃料電池車の開発に参入しています。開発が落ち着き、燃料電池車と燃料電池が量産に移行してしまえば、今のような積極的にチャレンジできる仕事への求人は減っていく可能性があるため、今は転職へチャレンジする絶好の機会とも言えそうです。

燃料電池に関する求人への転職を成功させるポイント

燃料電池の知識や経験が豊かなエンジニアにとって、さらなるスキルやキャリアアップ、好待遇を求めて転職する好機が訪れているようです。だからといって安易に転職先を決めてしまって、「こんなはずではなかった」と後悔する事態は避けたいものです。また、燃料電池の知識や経験は不足していても、今後の市場の成長を見込んで転職を希望するエンジニアも多いと思います。燃料電池に直接関わってなくても、これまでの経験が生かせる可能性もあります。そこで転職活動をするにあたり、成功するための3つのポイントを以下にまとめてみました。

業種/職種を定めよう

燃料電池に関わる業種と職種は様々で、どの立場で働きたいのかという志望を明確化する必要があります。メインの業種はエネファームや燃料電池車を開発、生産する製造業ですが、燃料電池を使った製品の販売やサービスを提供する業種も今後は増えていくことが予想されます。

また、製造業に限っても職種は研究開発から生産技術、営業や施工を含むエンジニアリング職などがあります。さらに、製品自体を作るメーカー以外にも、製品を構成する材料メーカーから電解質膜、セパレータ、電極触媒といった基幹部品メーカーなどもあり、生産する品目が変われば仕事内容も異なり、求められる経験やスキルは変わってきます。

転職希望者は、新たな業種や職種にチャレンジしたいのか、もしくはこれまでと同じフィールドの新たな環境で働きたいのか、自分が何を志望するのかを明確にすることで、転職活動の方向性が見えてくるはずです。

燃料電池に関連する業務経験を積もう

これまで燃料電池とは別分野の仕事をしてきた転職希望者は、経験不足のまま転職活動をするより、可能であれば、現職で志望する職種に近い業務経験を積めるように動いてみましょう。短期間でも関連する職種に携わることができれば、転職活動の際に大きなアピールポイントになるはずです。

業務で関わるのが難しい場合、専門書などを読んで勉強したり、電気関係の資格を取得したりするのも、転職の成功に向けた取り組みになります。現職より給料が下がるリスクはありますが、まずは未経験でも採用される可能性がある会社へ転職して業務経験を積み、今後のスキルアップを目指すのも一つの方法です。

燃料電池+αの技術/知識を身に付けよう

燃料電池車の開発では、これまでの自動車の開発や製造では使われてこなかった、新たな技術や知識が必要になります。例えば、MathWorks社が開発した数値解析ソフトウェア「MATLAB」を使ってシミュレーションができるエンジニアやデータサイエンティスト、予測変換モデルが作れるエンジニアなどが、燃料電池分野で活躍するようになっています。

これまで燃料電池の開発や製造に直接関わってこなかったエンジニアでも、データ分析や燃料電池の製造に使う要素技術に関わる経験があると評価される可能性があります。また、現職でもそのような業務があれば、経験できるように動いてみてはいかがでしょう。

燃料電池に関する求人の会社選びのポイント

燃料電池が関わる産業の裾野は広く、求人を出す企業は、ケミカルなどの原料メーカーから自動車、機械、電機、電子部品メーカーにおよびます。燃料電池車においては、高圧水素タンク、コンプレッサー、バッテリーといった、これまでとは異なる新しいコンポーネントが組み合わされて搭載されています。車載用の高圧水素タンクに限ってみても、水素による脆化を防ぐ目的で、炭素繊維で補強した樹脂タンクを使うため、炭素繊維企業や自動車の内装サプライヤが開発に参入し、研究開発のエンジニアを求めています。このように広範な業界から求人が出ているため、どうしても会社選びは難しくなります。

自分が何に興味があり、どの分野に転職したいのかを明確にするとともに、企業が求めるスキルを備えているかを客観的に判断しなければなりません。自分だけで難しい場合は、これまで築いてきた人脈や、エンジニア向けの転職エージェントに相談するなど、自分の求めるものと企業が求めるもののミスマッチを未然に防ぐことが重要になります。

燃料電池に関する求人への転職なら「メイテックネクスト」

上述の通り燃料電池分野では、機械設計、CAE解析、回路設計、ソフト、プラント、材料まで幅広いエンジニアが活躍できます。メイテックネクストでは、複数の技術領域に精通したアドバイザーが求職者一人一人の保有技術を正確に把握し、どのような領域でどう応用できるかご説明します。

「燃料電池に興味があるが未経験のため自信がない」「すでに燃料電池に携わっており、業界を変えて再チャレンジしたい」といったご要望をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。完成車、重工、総合電機、機械、素材業界まで、あらゆる業界の燃料電池関連の求人をお預かりしていますので、希望される業務に合せて最適な業界、企業、職種をご提案させていただきます。

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まとめ

国が進める水素社会の実現には、水素を活用して発電する燃料電池の普及が欠かせません。家庭用/産業用燃料電池や燃料電池車の実用化が進んでいますが、一気に普及が広がるほどのインパクトがないのが実情です。

それでも水素は次世代エネルギーの本命とされ、関連産業は今後の成長が見込まれており、エンジニアにとって魅力的でチャレンジしたくなる分野に育ちつつあります。高度な技術開発へのチャレンジと、社会課題の解決への貢献を両立できる可能性のある燃料電池には今後も注目です。


記事監修
梅津 太一(メイテックネクスト 東京支社長)

中小から大手メーカーに対する採用コンサルティングを4年、その後はキャリアアドバイザーとして11年、延べ4000名以上のエンジニアのキャリアカウンセリング経験を持ちます。得意としていることは「求職者の強みの抽出」と「要素技術軸、工程軸(方法論)でのマッチング」です。昨今のマーケットは先が読みくいが故、自身が今どのような経験を積むべきか、また、どの分野(強み・弱み)に負荷をかけ成長を促すかを求職者と一緒に考えていきたいと思います。


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