新潟大学は2022年7月1日、同大学自然科学系と産業技術総合研究所・ゼロエミッション国際共同研究センターの共同研究グループが、太陽電池と高効率水電解セルを使用した太陽光水分解によるグリーン水素製造システムを開発したと発表した。太陽光-水素変換効率13.9%で、1か月間安定して水素を製造できることを実証している。
太陽光由来の電力を用いた水電解によるグリーン水素製造においては、太陽光-水素変換効率(STH)が重要となる。STH(%)は、太陽電池の太陽光-電気変換効率(STE)×水電解セルの電気-水素変換効率(ETH)×太陽電池と水電解セルの最大出力比(MF)×100にて算出されるため、STHの向上にはSTE、ETH、MFそれぞれの最適化が求められる。
今回の研究では、鉄、ニッケルおよびタングステンを含む混合金属酸化物(FeNiWOx)が、高活性で安定な酸素発生触媒(水を酸化して酸素を発生する反応を促進する物質)として機能することが判明した。
FeNiWOx電極を酸素発生アノード(水電解において水を酸化して酸素を発生する電極)として、白金水素発生カソード(水を還元して水素を発生する電極)と組み合わせたセルを作成した。
同セルを用いて水電解を行ったところ、240mVの過電圧で水電解を達成した。従来の水電解セルの過電圧(315mV程度)より低い過電圧となっている。
低過電圧により、2接合型ガリウムヒ素(GaAs)太陽電池の起電力でも水を分解できる。GaAs太陽電池は安定で高いSTEを示すものの、従来の水電解セルに対しては起電力不足で使用できなかった。
同研究グループは、水電解セルと2接合型GaAs太陽電池を用いて、疑似太陽光(1 sun)照射下で太陽光水分解を行った。結果として、1か月間にわたってSTH13.9%(最新のSTHは6.1〜16%)で安定して水から水素を製造できることを実証している。
新潟大学の発表によると、世界最高水準のSTHだという。ETHが85%、MFが99%とそれぞれ高いことが、STHの向上に寄与している。
今回の研究成果は、グリーン水素製造システムの社会実装に繋がることが期待される。同研究グループは今後、水電解セルおよび太陽電池をさらに改良し、25%を超えるSTHを目指す。