温度で光の透過量が変化する液晶複合材料を開発――室内への太陽光侵入量を電力無しで調整できる省エネ窓ガラスなどへの応用に期待 産総研など

今回開発した熱応答型調光ガラス

産業技術総合研究所(産総研)は2019年9月30日、神戸市立工業高等専門学校および大阪有機化学工業と共同で、温度変化によって透明度と光の前方散乱強度が同時に変化し調光ガラスに応用可能な、液晶と高分子の複合材料を開発したと発表した。

調光ガラスは、太陽光透過量を制御することで建物の冷暖房負荷を低減できる建築部材として期待されている。電気で制御する調光ガラスはすでに普及し始めているが、設置条件やコストの面で制約がある。一方、温度変化で切り替わる調光ガラスは、それらの制約がない。これまで、温度変化によって入射光を透過側に散乱させることで白濁する複合材料の報告はあった。しかし、それでは光の全透過率が下がらず、プライバシーガラスとしては利用できるが、省エネ効果は期待できなかった。

今回の研究では、高分子ネットワーク液晶(PNLC)と呼ばれる液晶と高分子からなる複合材料を、2枚のガラス基板で挟んだ構造の調光ガラスを開発した。

このPNLCは、高分子の網目の中に液晶が満たされている構造を持ち、低温では液晶分子が配向して液晶層と高分子層の屈折率が一致して光学的に透明になる。一方、高温になると液晶分子の配向が乱れて屈折率が変化し、光学的に不均一になるため白濁する。さらに今回、PNLCの微細構造を詳しく調べることで、白濁状態で後方散乱が生じて、全透過率が大きく変化する構造を見出した。これにより、同材料の温度を30℃から50℃に上昇させると、30秒以内に直進透過率を80%以上から10%以下に下げられる。

PNLCを調光させた際の窓外景色の様子。
低温での透明状態(左)と、高温での白濁状態(右)。

今回開発した全透過光量の制御可能な熱応答型のPNLCは、生活温度付近で調光でき、ガラスなどへ組み込むことで省エネ窓ガラスなどとしての活用が期待できる。また、作製工程や動作原理がシンプルなため、製造や施工、運用面でも有利だという。

今後は実用化に向けて、全透過率の変化幅の拡大と耐久性向上に取り組むとともに、窓ガラスへ後貼り施工が可能なプラスチックフィルム基板を用いた調光フィルムの作製技術の開発に取り組むという。

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