超伝導体中のクーパー対を2本のナノ細線上に弾道的に分離することに成功 理研と東大

この研究で発見された弾道的なクーパー対分離の模式図

科学技術振興機構は2019年10月5日、理化学研究所と東京大学が共同で、並列に配置された2本の半導体ナノ細線上にジョセフソン接合を形成し、超伝導体中のクーパー対を構成する2つの電子を2本のナノ細線へ、高効率で弾道的に分離することに成功したと発表した。

量子もつれ状態にある2つの粒子は、空間的に離れていても、片方の粒子の測定結果が瞬時に対になる粒子の状態に影響する。この「非局所的」な性質を持つ粒子相関を制御・検出することが、量子情報を長距離で伝播させ、ネットワーク化の技術基盤となる。

量子もつれ状態は、超伝導体中のクーパー対を構成する2つの電子間に存在する。このクーパー対を空間的に分離して、量子もつれ状態の2つの電子を個々に操作できれば、まだ不明な部分が多い非局所性の量子相関の物理を解明できる。

クーパー対の分離には、電子を閉じ込める構造の「量子ドット」を使う方法が一般的だ。しかし、この方法では電子を個々に操作できなかった。量子ドットを1次元の細線に置き換え、電子を弾道的に伝搬させられれば、電子回路の自由度が高まり、量子もつれ状態のさまざまな量子力学実験が可能になると期待される。

今回の研究では、並列に配置した半導体ナノ細線インジウムヒ素に、超伝導アルミニウムを接合したジョセフソン接合デバイスを作製。接合間を流れる超伝導電流を測定し、量子もつれ状態のクーパー対が2本のナノ細線中へ効率良く分離する現象を発見した。

今後は、分離効率の向上や1次元電子回路中での量子もつれ状態の制御などの新技術の誕生が期待できるという。また、クーパー対分離を用いた新たな量子現象を発現するデバイスの開発や、固体中での量子もつれ状態の基礎物性の解明が期待できるという。

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