蛍光体材料の発光強度が変化するメカニズムを解明――結晶構造変化と密接な関係 豊橋技術科学大学など

豊橋技術科学大学は2020年2月4日、同大学教育研究基盤センター 教授の中野裕美氏、名古屋工業大学、物質・材料機構(NIMS)による研究チームが蛍光体材料の発光強度と結晶構造の関係を明らかにしたことを発表した。白色LED用蛍光体材料開発の材料設計に活用できるという。

白色LEDは産業界をリードする分野だが、蛍光体材料のメカニズム解明の詳細に関する論文は多くない。そこで研究チームは、様々な熱処理温度で、シリケート(Ca2SiO4)系材料にP2O5とEu2O3を添加した赤色蛍光体材料の結晶構造を変化させ、その違いによって発光強度が変化するメカニズムを解明した。

シリケートが熱によって容易に結晶構造を変化させることから、熱処理温度を1200~1500℃と変え、Ca2SiO4にPと賦活剤(結晶に入ることで青から赤色までいろいろな発光色を発する元素)としてのEu3+を添加した赤色蛍光体を合成。研究の結果、発光強度は熱処理温度により変化し、結晶構造変化と密接な関係があることがわかった。

研究チームは、1500℃で熱処理をした蛍光体材料の結晶構造が、セラミックス材料にはめずらしい不整合構造(IC)に変化したことに注目。通常の結晶構造は整数倍の周期だが、IC相は非整数倍の変調を有する結晶構造で、発光強度はIC相の形成により低下した。そこで、X線回折法と計算科学を駆使した結果、原子レベルで結晶構造を詳しく解析することに成功した。

解析の結果、b-方向に4.110倍の変調構造を有し、その構造はSiO4 四面体の3種類(T,U,S)の傾きが存在すること、長い周期でみるとさらに2種類(T”,S”)の傾きの存在により、IC相を構成していることがわかった。このような複雑なIC相が形成された理由は、SiO4四面体の一部にPが存在すること、Caの一部にEuが存在することに加え、1500℃の高温から急冷処理により形成されたと考えている。

熱処理とPイオンやEu添加により生じた材料の結晶構造の変化を原子レベルで詳しく解析できたことにより、今回の知見が新材料設計に活用できるという。今後、さらに新材料開発を進めながら正確に結晶構造を解析し、物性と関連付けた新知見を広く公表していくことを目指す。

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