ナノ触媒粒子の触媒活性を評価する新手法を開発――効率的な水素製造法への寄与が期待

貴金属を使わない粒子の触媒活性を評価する新手法を開発した研究チーム© RUB, Kramer

ルール大学ボーフムの研究チームが、個々の触媒粒子について、その触媒特性を評価できる新手法を開発した。走査型電気化学セル顕微鏡を使った測定法を見直すことで実現したもので、水の電気分解から水素を製造する貴金属触媒を代替する、安価な粒子を開発できる可能性に繋がると期待される。研究成果は、2019年10月1日の『Angewandte Chemie』誌に公開されている。

「水の電気分解によって水素を製造する安価で効果的なナノ粒子触媒を開発するには、個々の粒子やその小集団の構造や活性を評価する必要がある」と、ルール大学ボーフムの電気化学センターのWolfgang Schuhmann教授は語る。しかしながら、個々のナノ粒子の触媒活性を測定することは容易ではない。「測定しなければならない電流が非常に小さく、それを再現性よく測定することが難しい」と、Schuhmann教授。局所的な電気化学測定法として、微小電池構造を利用した走査型電気化学セル顕微鏡が知られているが、局所における表面濡れ性の問題や、溶液pHや電位などのドリフトによる測定誤差を生じやすく、これまでは得られた結果の信頼性は高いとは言えなかった。

今回研究チームは、走査型電気化学セル顕微鏡に対して、安定した内部標準としてpHに影響されないOs(オスミウム)複合体を導入することで、測定誤差を排除するとともに、長時間、安定的に高スループットで測定することに成功した。実験資料として、窒素とコバルトをドープした炭素粒子を合成、ガラス状炭素の表面上に、個別あるいは小集団の粒子として分散させた。そして、走査型電気化学セル顕微鏡を用い、個々の粒子または小集団の電気化学活性を測定することに成功した。触媒活性を評価する因子として、活性点1個における単位時間あたりの反応回数TOF(Turnover Frequency)を測定したところ、基準電極による電位1.7V~1.8Vにおいて0.25/s~1.5/sであった。

水の電気分解により水素と酸素が生成するが、このプロセスの制約段階は、酸素が発生する部分反応にある。新しく開発された触媒活性評価方法を活用することにより、酸素発生反応を促進する触媒作用を持ち、貴金属を使わずに製造できる安価な触媒粒子を開発することができると、研究チームは期待している。

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Determining the activity of noble-metal-free catalyst particles

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