省エネルギー、低コストの二酸化炭素分離技術「CO2促進輸送膜」が実用化 神戸大学など

中空糸促進輸送膜 a)全体外観 b)断面 c)内面近傍断層

神戸大学は2019年10月28日、ルネッサンス・エナジー・リサーチ(RER)および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で開発した、低エネルギー消費で二酸化炭素(CO2)を分離する「CO2促進輸送膜」が2020年に実用化されると発表した。

従来から火力発電所などで採用されている環境対策など向けのCO2分離の方法は、液体のアミンや固体のゼオライトにCO2を吸収/吸着させるものが主流だ。しかしこの方法はエネルギー消費量が多く、設備の導入コストが高いという課題があった。

今回神戸大学らが開発したCO2促進輸送膜は、同大学の先端膜工学研究センターが進めるさまざまな膜技術の実用化の一環として開発。CO2のみに反応するキャリアーを含んだゲル状の膜を利用する。ガス中のCO2はこのキャリアーと結合して膜内を移動し、膜の反対側でキャリアーと分離して放出される仕組みだ。他の気体はこのキャリアーと結合しないので、膜を通過しない。

CO2促進輸送膜は、CO2の透過速度が速く選択性も高いという性質を持つ。さらに従来の分離方法と比較して低エネルギー消費量で分離でき、分離装置も小型化できるという。

今回、鹿児島県の牧場において、乳牛などの家畜のふん尿を発酵させて生成したガスを使ったバイオガス発電の効率化および省エネ化を目的に利用される予定だ。

神戸大学が研究を進めるCO2分離/回収技術は、今後発電所や製鉄所などでの温暖化ガス排出抑制や、天然ガスからの水素製造などさまざまな分野への導入によって、温暖化抑制への貢献が期待されるという。

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