ピコ秒以下の超高速、低消費エネルギーで動作する全光スイッチを開発――グラフェンと光ナノ導波路を組み合わせて実現 NTTと東工大

グラフェンとプラズモニック導波路を結合させた素子の概念図(左)と電子顕微鏡像(右)

NTTは2019年11月26日、東京工業大学と共同で、プラズモニック導波路という幅と高さが数10nmの光導波路にグラフェンを組み合わせ、ピコ秒(1兆分の1秒)以下の超高速、低消費エネルギーで動作する全光スイッチ(光で光信号を制御する光スイッチ)を開発したと発表した。

光で光信号を制御するには、光の通り道に配置した物質の特性を光によって変化させる必要がある。この物質の応答速度がスイッチング時間を決める。そのため、NTTと東京工業大学の共同研究チームは、非常に高速な非線形光学応答を示すグラフェンを採用した。

しかし、グラフェンは厚さが単原子層分しかなく、効率的に光と相互作用させるのが難しい。素子長が非常に長くなり、結果として大きなエネルギー消費をもたらすという問題があった。そこで研究チームは、プラズモニック導波路で光をナノサイズの領域に閉じ込め、グラフェンと光の相互作用を増強し、この問題を解決した。

今回作製したプラズモニック導波路のコアは、断面積が30nm×20nmと非常に小さい。シリコン導波路の100分の1程度であり、単一モード光ファイバに比べると約10万分の1となる。そのため、プラズモニック導波路にグラフェンを貼った本素子は、シリコン導波路にグラフェンを貼った素子に比べ、グラフェンによる光吸収の効率が1桁向上するとともに、非線形光学効果を引き起こすために必要なエネルギーを4桁低減できた。

今回開発した光スイッチでは、制御光がグラフェンの非線形光学効果を引き起こし、光吸収の度合を変化させることで、信号光のON/OFF状態が制御される。その結果、グラフェンを用いた従来の光スイッチング素子に比べて動作速度が1桁、消費エネルギーが4桁改善された。

また、この光スイッチは、ピコ秒以下の超高速領域では、他のあらゆる光スイッチの中で最も低消費エネルギー(従来の1/100)で動作する。これは、世界で初めてフェムト秒領域の応答時間かつフェムトジュール領域の消費エネルギーで動作するスイッチを実現したことを意味するという。

今回の成果で示した全光スイッチは、電気制御では到達不可能な超高速なスイッチ動作を低消費エネルギーで実現していることから、将来の光情報処理集積回路において超高速制御を担うことが期待される。また、極限的に小さな光導波路の実装を可能とするプラズモニック導波路技術のさらなる深化が期待できるという。

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