「航空機用構造材料の破壊はどこから始まるか」を放射光X線顕微鏡を用いてナノレベルで観察 KEK

高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所は2019年12月18日、航空機の機体や翼の構造材料として用いられている炭素繊維強化樹脂(Carbon fiber reinforced plastic:CFRP)複合材料内に、き裂が発生/進展する様子を放射光X線顕微鏡を用いて空間分解能50nm程度で観察したと発表した。

CFRPは、小さなき裂が発生しても、それが致命的なサイズに進展しなければ材料全体として安全に使用できる材料であり、き裂発生や進展のメカニズムはCFRPを安全に使うために不可欠な情報だ。

CFRP内のき裂の観察は、現在のところ空間分解能が数mm程度に限られている。高空間分解能での測定には、光学顕微鏡、電子顕微鏡などが用いられるが、材料の表面や1μm以下の薄膜に限定されるため、実際の材料内部で生じるき裂の発生の観察が困難だった。

同研究に用いたX線顕微鏡の概要(模式図)

今回の研究では、X線を集光/結像する光学素子を活用したX線顕微鏡を用い、従来のX-CT法の空間分解能を20倍以上高めた。また、CFRPは、炭素繊維と樹脂という密度差が小さい2つの材料から構成されているために従来の吸収法では明瞭な像が得られなかったが、同研究では密度差だけでなく界面を強調して測定することが可能な位相コントラスト法を利用し、明瞭な像を取得した。

研究グループは、同研究の特徴として、試料に応力印加しながら、X線顕微鏡による高分解能観察を実現した点を挙げている。試料の形状、加工法、応力印加方法などを試行錯誤し、50nmという高分解能で三次元観察を達成。圧縮/引っ張りなどの応力下での観察に成功した。

分解能を上げると顕微鏡の視野が小さくなるが、同研究では、高分解能での測定と併せて、低分解能/広い視野でのX-CT法の観察を行い、マルチスケールでCFRPの観察を実施。き裂が発生し伝搬して大きなクラックに成長するまでのメカニズムを検討した。

応力印加下でX線顕微鏡観察するための実験方法の概要

その結果、樹脂内のき裂発生と、炭素繊維/樹脂界面での剥離が競合して、き裂が発生することが明らかになった。単純に応力集中している場所から、き裂が発生するのではなく、観察された2つの過程の起こりやすさが、き裂発生と進展に関係していることも解明された。

観察された2つの過程が、き裂起点となることは、さまざまなモデル計算から予測されていたというが、実際に測定されたのは初めてであり、今後の理論モデル計算の精度向上に貢献したという。

同アプローチ法は、異相界面、接着界面でのき裂観察法として広く適用できることから、3DプリンターによるAdditive manufacturingの接着界面での強度制御を知るための評価法に用いられると期待される。

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