バッテリー不要のコンピューター入力デバイスを開発――親指で人差し指側面をタップするだけ

カナダのウォータールー大学は、2019年11月28日、指先を触れ合わせるだけでコンピューター入力を可能にするバッテリー不要のウェアラブルデバイスを開発したと発表した。研究成果は、アメリカのニューオーリンズ州で開催されたユーザーインターフェース分野の国際会議「UIST ’19」で2019年10月23日に発表されている。

このデバイスは「Tip-Tap」と名付けられたウェアラブルデバイスだ。無線自動識別(RFID)タグを使用し、指先が触れたことを感知してコンピューター入力信号を発生させる仕組みだ。バッテリーは不要で、デバイス作製費用も安く、使い捨ての手術用手袋に付けて、外科医が手術室で術前計画データにアクセスするなどの利用方法が考えられるという。

研究チームは、カナダ国立研究機構(NRC)と協力して、Tip-Tapのプロトタイプを作製した。

親指と人差し指の動きを詳細に研究し、親指の腹で人差し指側面を触れる場所を調べ、親指が人差し指側面で触れる場所の違いによってコンピューターへ入力するコマンドを出せるようにしたという。この結果を基にさまざまなプロトタイプを作製した。

研究初期は有線のデバイスだったが、バッテリー不要にするのが困難だった。RFIDタグを採用して開発に取り組み、RFIDタグのアンテナを2分割して、各面に3つのチップを備え付けて指先での入力を可能にし、バッテリー不要にすることができたという。

Tip-Tapは手袋に付けるか、シール式タトゥーのように指に直接貼り付けることもできるようだ。実際に、手袋にTip-Tapを付けたバージョンと指に直接貼り付けるバージョンの2パターンでコンピューター操作の実証実験が行われ、縦3×横3の9分割画面の中から1カ所を選ぶといった簡単なコマンドを実行できた。

指先を目視しない場合の実験も行われ、指先の操作により正しいコマンドを86%の精度で入力できたという。デバイス表面に凹凸を設けたり、触覚フィードバックを取り付けたりする必要はないとしている。

Tip-Tapはバッテリーや配線不要であることから、工場での作業時やジムでの運動中など利用できる状況は多いとみられる。

研究チームの一員であるウォータールー大学のDaniel Vogel教授は「Tip-Tapの応用例の1つに外科手術があります。現在は、助手がコンピューターを操作して術前計画データにアクセスし外科医とやり取りしています。外科医自身がタッチスクリーンやマウスを使ってコンピューターを操作すると、消毒滅菌作業を絶えずすることになり、問題があるからです」と語っている。

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