廃コンクリートに二酸化炭素を固定した上で、ブロック状に固化する技術を開発 東京大学ら

東京大学は2024年7月24日、同大学大学院工学系研究科の研究グループが東京理科大学、太平洋セメントと共同で、コンクリートの廃棄物に二酸化炭素(CO2)を固定した上で、ブロック状に固化する「カルシウムカーボネートコンクリートブロックの製造技術」を発表した。既存の手法に比べてより多くのCO2を固定できるだけでなく、低エネルギーで固化でき、製造したブロックはそのまま再利用できる。

これまで、セメント製造に伴うCO2排出量に対応するカーボンオフセット技術として、セメントの一部分を置換する粉体として用いたり、骨材の一部をCO2を固定した造粒物に置換する手法が検討されてきた。

CO2をセメントの反応に用いる場合には、できあがった部材やブロックに対し、高濃度のCO2ガスを外側から用いて反応を促進させる炭酸化養生という手法があるが、反応が材料の内部まで進まず、CO2の固定量を上げるためには大きなハードルがあった。また、コンクリート用材料の一部をCO2を固定した材料に置換した場合は、一般的なセメントを用いる際に、その使用に伴ってCO2が排出される。

そこで研究グループは、建設廃材を粉砕し、空気中のCO2を固定したのち、効率的に固化体とする加圧成形による製造方法を開発。カルシウムカーボネートコンクリートブロックの製造に成功した。今回開発した技術は、空気中のCO2を固定して炭酸カルシウムができたあと、固化体の強度がより高くなる。

一般的なセメントペーストと空気中のCO2と反応し炭酸化したあとのセメントペーストの粉末を用いて、今回提案した手法で成形した固化体の圧縮強度の比較

固定化の形成メカニズムは、炭酸カルシウムが溶けやすい溶液とともに加圧される場合に発現する。走査型電子顕微鏡による分析では、加圧で圧力が生じている結晶の一部が溶解し、結晶同士が結合するコールドシンタリング(冷間焼結)だとわかった。

炭酸化したセメントペースト粒子の接合面で生じる炭酸カルシウム結晶の結合の様子

炭酸化したコンクリート廃材粒子の接合面で生じる反応の模式図

これまでの手法とは異なり、多くのCO2をブロックの内部に固定できる。また、廃コンクリートとCO2を原材料として用いるため、原材料の製造に関わるCO2排出量を大幅に抑制する。製造したブロックは、そのまま再利用でき、解体後に粉砕した場合も再利用できる。

取り壊される可能性のある建築物中のコンクリートを再利用してCO2を固定し、新しい建築物の一部として再利用できれば、いままでセメント製造時に排出されていたCO2を、原材料である炭酸カルシウムに戻しながら利用することになる。

この炭酸カルシウムは、非常に安定で永続的に固定できる。さらに、開発した材料は粉砕して再整形し、利用できるため、CO2を固定しながら建築材料のサーキュラリティへの移行を支援できる。

関連情報

廃コンクリートとCO2からできるカルシウムカーボネートコンクリートブロックの製造技術を開発|プレスリリース | UTokyo-Eng

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