- 2020-1-20
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- Nature Electronics, Peide Ye, セレン化インジウム(α相)(α-In2Se3), トランジスター, パデュー大学, 学術, 強誘電体メモリ(FeRAM), 脳内ネットワーク
米パデュー大学のPeide Ye教授が率いる研究チームは、トランジスタを情報処理と情報記憶の両方に使う手法を開発したと発表した。研究成果はオンラインジャーナル『Nature Electronics』に2019年12月9日付で発表されている。
従来、コンピューターチップは、情報の処理にはトランジスタ、記憶には強誘電体メモリ(FeRAM)というように異なる2つのデバイスを使用してきた。本研究では、この2つのデバイスを1つにしてチップ上にスペースを作り、よりパワフルで高速処理を可能にする電子回路の開発を進めたという。
研究者たちは何十年にも渡ってトランジスタとFeRAMを統合させようと試みてきた。しかし、トランジスタを構成する半導体材料のシリコンと強誘電体材料との境界面に問題が生じ、解決策を見出せずにいた。一方で、FeRAMを独立したオンチップユニットとして動作させていると、コンピューターをより効率的にする可能性を制限してしまっていたという。
今回の研究では情報を処理するトランジスタに注目し、研究チームは強誘電特性を持つ半導体材料を使ってトランジスタを作製した。こうすることで2つの材料ではなく1つの材料のみ扱えるようになり、シリコンと強誘電体材料との境界面の問題を解決に導いた。
その注目すべき半導体材料は、セレン化インジウム(α相)(α-In2Se3)だ。セレン化インジウムは、強誘電特性を持っているだけでなく、強誘電体材料よりバンドギャップがはるかに狭いため、バンドギャップが広いために絶縁体として働いてしまう強誘電体材料にみられる問題にも対処できるという。
セレン化インジウムは強誘電特性を保持したまま半導体として振る舞い、バンドギャップが狭いため、材料の厚みを10ナノメートルと非常に薄くできるので、より多くの電流を流せる。
研究チームがトランジスタを作製して実証実験を行ったところ、その性能は既存の強誘電体電界効果トランジスタに匹敵し、最適化すればそれ以上の性能を発揮する可能性もあるようだ。
電流が増えれば、デバイス領域を数ナノメートルまで縮小でき、チップを高密度にしてエネルギー効率も向上させることができるとYe教授は説明する。
さらに、原子層レベルの厚みに達するほど材料がより薄くなれば、トンネル接合の両側の電極を非常に小さくすることができ、人間の脳内ネットワークを模倣する回路の構築にも役立つだろう。