半導体薄膜における電磁波の挙動を高速シミュレーションできるアルゴリズムを開発

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光/電磁波とデバイスの相互作用の高速シミュレーションに用いられた、SMUのスーパーコンピューター「ManeFrame II」

南メソジスト大学(SMU)の研究チームが、入射する光/電磁波と半導体薄膜の3D積層構造の複雑な相互作用、すなわち透過や反射、散乱、放射を効率よくシミュレートできる高速アルゴリズムを開発した。薄膜特性や境界条件の様々な現実的な条件を取り込み、マクスウェル方程式やヘルムホルツ方程式を、効率的かつ高速、安価に数値解析することができ、生物学や天文学から軍事用途や電気通信まで広く応用展開できると期待される。研究成果は、2019年12月17日に米国応用数学会SIAMの『Scientific Computing』誌にて公開されている。

「電磁波は、エネルギーバンドにおける電子や正孔の挙動、または他の量子力学的プロセスから発生する光の放射エネルギーとして存在し、無線電波やマイクロ波、光、X線など広範囲に渡る」と、SMU応用数学科のWei Cai教授は説明する。電磁波は、携帯電話やテレビだけではなく、デバイス材料との様々な相互作用を利用して、光エレクトロニクスや、アンテナ、レーダー、衛星といった通信システム、MRIなどの各種医療画像処理装置などに利用されている。さらに、ナノサイズの薄膜積層構造を利用して、量子井戸型のエネルギーバンド構造を形成することで、格段に高い変換効率を持つ量子ドット太陽電池など、研究領域が更に発展拡大すると予想されている。

一方で、現実の装置やデバイスでは、不規則な形状や複雑な境界条件、広い周波数範囲などにより、古典的なマクスウェル方程式やヘルムホルツ方程式を解析的に解くことは困難だとされている。そのため、現実の電磁波の挙動は、コンピューターシミュレーションにより解析されており、計算電磁気学として大規模アンテナや医療画像処理装置の設計やモデリングなどが行われている。ところが、例えば半導体薄膜の複雑な3D積層構造などでは、電磁波の挙動をシミュレートするのに数日から数カ月という膨大な時間がかかるという課題がある。

今回SMUの研究チームは、解析的に解くことが難しいヘルムホルツ方程式を、高速かつ安価に数値解析できる効率的なアルゴリズムを開発した。高速多重極展開法(Fast Multipole Methods:FMM)と呼ばれる数学的手法を修正して活用したもので、計算結果の収束性が著しく高まることが確認された。

Cai教授は、半導体薄膜の3D積層構造を対象として、アメリカで最も速いスーパーコンピューターの1つであるSMUの「ManeFrame II」を用いて、シミュレーションを実施し、「シミュレーションに要する時間を、1カ月から約1時間に削減できた」としている。「この研究により、量子ドット太陽電池をシミュレートすることができ、非常に小型で効率的かつ軽量の太陽電池の開発に繋がる」と、研究チームは期待している。

関連リンク

SMU develops efficient methods to simulate how electromagnetic waves interact with devices

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