謎の流体運動への新たな洞察を発表――遷移流の新概念を説明 沖縄科学技術大学院大学

沖縄科学技術大学院大学(OIST)流体力学ユニットの教授 ピナキ・チャクラボルティ氏、連続物理ユニットの教授 グスタボ・ジョイア氏らは2020年1月25日、謎の流体運動への新たな洞察を発表した。将来的に、乱流遷移と乱流についてより包括的で概念的な理解をもたらすという。

研究は、遷移流研究の新たなアプローチを開発するため、数十年前からの乱流の概念理論から出発。特定の条件下で乱流状態を説明するために役立つ概念理論が、乱流の遷移状態にも適用できるかを理解するために研究を開始した。

池に流れ込んだ水流は、レオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチに描かれているように、大きな渦を最初に形成した後、すぐに不安定になり、次第に小さな渦に分散していく。エネルギーは大きな渦から小さな渦へと遷移し、水の粘性によって最小の渦がエネルギーを消散させる。

(左図)ダ・ビンチの乱流プールの渦のスケッチ。 (右図)ダ・ビンチのスケッチ内の四角で囲まれた領域内の流れに対応するエネルギー・スペクトル図。

コルモゴロフの理論は、このイメージを定式化。運動エネルギーが異なる大きさの渦にいかに分配されるかを説明する「関数」が存在し、エネルギースペクトルを予測する。この理論では、小さな渦のエネルギー論は普遍的で、乱流は異なって見えるが、すべての乱流中の最小の渦は同じエネルギースペクトルを持つことが重要となる。

しかし、コルモゴロフの理論が適用できるのは、数少ない理想的な流れのみで、遷移流を含む日常生活でみかけるような流れには適用できないと考えられていた。

研究ではこの遷移流を調べるため、長さ20m、直径2.5cmの円筒形のガラス管を流れる水の実験を実施。水の中には、水とほぼ同じ密度で中が空洞になっている微粒子を加え、管内の水流を視覚化した。さらに、遷移するパイプ流の渦の速度を測定するため、レーザードップラー速度計を用い、測定した速度でエネルギースペクトルを計算した。

その結果、遷移流の小さな渦に対応するエネルギースペクトルは、乱流とは異なって見えるが、コルモゴロフの理論からの普遍的なエネルギースペクトルに一致していた。この発見により、遷移流の新しい概念を説明できるという。また、工学への応用が期待できる。

研究は、エネルギースペクトルが流れとパイプ内の摩擦の予測に役立つことを示している。パイプ内の摩擦が大きければ大きいほど、石油のような流体をポンプで汲み上げたり、輸送したりすることが困難になるという。

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