群馬大学は2020年1月30日、市販の光学顕微鏡のフォーカス位置をマイクロ秒で制御できる高速3次元カメラモジュールを開発したと発表した。遊泳する細胞の位置を3次元的に計測し、動画像の計測に成功している。
光学顕微鏡は、複数の画像をフォーカス位置を変更しながら撮影すると、対象の3次元的な構造が計測できる顕微鏡だ。フォーカス位置を1/1000秒やそれよりもさらに短い時間で変更すれば、遊泳する細胞や心臓の拍動のような高速の現象も観察できる。
しかし、一般に利用されている光学顕微鏡には、高速にフォーカス位置を制御するための原理がなかった。そこで群馬大学の研究チームは、数マイクロ秒でフォーカス位置を変更できる高速3次元カメラモジュール、それも通常の光学顕微鏡で利用可能なものを開発した。
このモジュールは、約70kHz(1秒に7万回)で高速に焦点距離が振動する液体レンズと、レンズに同期して多重露光ができる特殊なカメラで構成されている。撮影したいフォーカス位置のタイミングのみシャッターをあける動作を繰り返し、内部で単発の露光から得られる信号を蓄積することで、十分な明るさの画像を得られる。
開発した高速3次元カメラモジュールは、遊泳する細胞(クラミドモナス)の位置を1秒間に1000回、3次元的に計測し、顕微鏡のフォーカス位置中央にくるように対象を追いかけながら、対象の動画像を計測することに成功している。
研究成果は、生命科学や医療分野の顕微鏡計測、顕微鏡下手術補助、血液検査や不妊治療の高速高精度化、製造技術やFA、ロボット分野の製品画像計測、検査の高速化、高精度化に応用できる。