ダイヤモンドアンビルセル内部の応力場を直接測定できるナノスケールセンサーを開発

超高圧による新物質創成を可能にする、ダイヤモンドアンビルセル用のナノスケールセンサーを開発した研究チーム。

アイオワ州立大学とカリフォルニア大学バークレー校の共同研究チームが、高圧下にある材料における応力場および磁性挙動を、詳細に画像化して測定できるナノスケールセンシング技術を開発した。超高圧を生成できるダイヤモンドアンビルセルのダイヤモンド結晶中に、窒素空孔センターを導入、配列することによって、圧縮された材料におけるひずみ場、応力場および磁場の検出に成功した。研究成果が、2019年12月13日の『Science』誌に報告されている。

材料に超高圧を負荷することで、材料の物理的、化学的、電気的性質が変化、通常圧力条件では出現しない変態相が生成し、多くの技術応用分野で活用できる全く新しい物質を生み出す可能性がある。超高圧を実現する実験装置としては、底面が向い合わせに配置された2つのダイヤモンド圧子の間で材料サンプルを圧縮する「ダイヤモンドアンビルセル(DAC)」が知られている。10万気圧から数100万気圧以上までの超高圧を印加することができ、惑星内部の圧力環境の再現や、反応性の高い超臨界流体を利用した新物質の合成/創成などの研究が活発に行われている。

DAC内部のサンプルに生じる変態相などの観察は、透明なダイヤモンド越しにX線や分光装置を使って行われているが、材料内部の応力場を測定することは、これまで困難だった。今回研究チームは、ダイヤモンド結晶底部に、一連の窒素空孔センター(NVC)を配列し、ナノスケールセンサーとすることを検討した。ダイヤモンド結晶におけるNVCは、本来は炭素原子があるべき位置が窒素原子により置換され、隣接する位置に空孔が存在する複合的な結晶欠陥だ。磁場、電気、温度、ひずみ、応力に対して敏感に反応するため、室温で動作する高感度なナノスケールの量子センサーとして利用できる。

研究チームが開発した技術は、6つの応力成分およびベクトル磁場を画像化でき、測定および計算を可能とするものだ。研究チームはまた、DACの高圧実験に関する、マルチスケール・コンピュータ・モデリングも実施した。実験と併せてシミュレーション解析することにより、DAC全体に渡る全ての応力場を再現し、実験結果を検証することができた。この結果、高圧下における鉄のα⇔ε相変態の圧力依存性、およびガドリニウムの複雑な応力温度状態図を明らかにすることに成功した。

開発されたNVCによるナノスケールセンサー技術は、電気的または熱的特性などの他の材料特性を測定するにも用いることができる。研究チームは、「これにより、極端な条件における材料を定量的に評価する、広範囲な実験が可能になる」と期待している。

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Researchers create nanoscale sensors to better see how high pressure affects materials

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