- 2020-2-3
- 技術ニュース, 電気・電子系
- ITER, トロイダル磁場コイル, 三菱重工業, 核融合実験炉, 研究, 超伝導コイル, 量子科学技術研究開発機構(量研)
量子科学技術研究開発機構(量研)と三菱重工業は2020年1月30日、核融合実験炉イーター(ITER)用の高さ16.5m×幅9m、総重量300トンとなる世界最大級の超伝導コイルであるトロイダル磁場コイル(TFコイル)が完成したと発表した。
ITERは高温で高密度のプラズマを発するので、それを閉じ込めるためには12テスラの磁場を発生させる必要があり、ニオブ・スズ超伝導体を用いた従来にない大きさの超電導コイルの開発が求められていた。そこで量研と三菱重工は、その寸法に対して1万分の1以下の精度でニオブ・スズ超伝導体を巻線する技術を開発した。
また、超伝導状態を維持するには−269℃の極低温状態で稼働する必要があった。そこで、極低温で高い強度を有する特殊ステンレスを構造材料に用いることで極低温での耐久性の課題を克服した。さらに、溶接による変形を抑える条件を見出し、要素試験や小規模試験体、実規模試験体による検証を経て、材料特性に適した溶接技術や加工技術などの基盤技術を確立した。
ITER計画は、核融合エネルギーの実現に向けて科学的、技術的な実証を行うことを目的に、日本、欧州、米国、ロシア、韓国、中国、インドが参加する大型国際プロジェクトである。2025年の運転開始を目標にフランスで建設が進められている。
日本はTFコイルをはじめとしたITERにおける主要な機器の開発や組み立てなどの役割を担っており、量研がITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を進めている。2025年の運転開始に向け、三菱重工の二見工場からは計5基のTFコイルを出荷する計画となっている。