- 2020-3-19
- 化学・素材系, 技術ニュース
- デンヨー興産, メチルシクロヘキサン, 日立製作所, 水素キャリア, 水素サプライチェーン, 水素混焼発電機システム, 産業技術総合研究所, 産総研, 研究
産業技術総合研究所(産総研)再生可能エネルギー研究センターの水素キャリアチーム チーム長 辻村拓氏らは2020年3月18日、日立製作所、デンヨー興産と共同で、水素混焼発電機システムで発電するサプライチェーンの技術を実証したと発表した。発電出力300~500kW、水素混燃率40~60%で、合計1000時間以上の水素混焼発電機システムの稼働を達成している。
今回、実証した技術は、福島県で導入を促進している再生可能エネルギー電力で水素を製造し、化学変換、貯蔵、輸送を経て、水素混焼発電機システムで発電する。このサプライチェーンでは、再生可能エネルギー電力で製造した水素を用いて、トルエンを水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)に化学変換するが、今回、シンプルな構成の水素キャリア製造システムを開発した。
産総研では、省ける工程を水素キャリア製造システム全体からできるだけ省き、シンプルな構成とし、設備コストを半減させるシステムを開発してきた。さらに、変化する再生可能エネルギー発電電力による水素流量に対応して、反応条件をリアルタイムで最適に保つために、制御器に操作条件の最適化制御マップを組み込み、反応を制御する手法を確立した。その結果、水素が変動して製造された場合でも水素化反応の選択率が99.6%以上となり、反応副生物を少なく抑制できたという。
また、日立製作所、デンヨー興産とともに、保土谷化学工業の郡山工場にディーゼルエンジンをベースにした水素混焼発電機システムを設営し、燃焼試験を行った。脱水素ユニットへ産総研で製造したMCHを供給し、MCHの脱水素反応にエンジン排熱を利用して水素を発生させ、同工場で生産された水素とともに水素混焼試験を実施した。さらに、軽油の代わりに、福島県内の学校給食などで使用済みの食用油を原料にしたバイオマス燃料を使用し、水素混焼発電機システムを稼働させた。
水素混焼発電機システムの燃焼試験では、発電出力300kWで発熱量割合60%の水素を軽油と混焼させ、700時間の燃焼試験を実施した。発電出力500kWの条件では、発熱量割合40%の水素を300時間燃焼させ、水素混焼発電システムとして、初めて合計1000時間以上大きな問題なく稼働させた。発電出力300kWの条件時は、短時間だったが、水素の発熱量割合を80%以上にして、軽油の使用量を80%以上削減できることを確認したという。
今後は、MCH水素キャリアを活用し、再生可能エネルギーを平準化して安定的に電気と熱を供給することや、石油コンビナート/鉄鋼/化学プラントから生成される副生水素を燃料に地産地消する事業モデルの普及/拡大を図っていく。