薄さと多孔質性を両立――海水と淡水から従来の100倍の発電ができるイオン交換膜を開発

オランダのライデン大学の研究チームは、海水と淡水から電気エネルギーを取り出す逆電気透析発電(reverse electrodialysis:RED)に使用できる新しい薄膜を開発した。厚みはわずか2nmで、従来のイオン交換膜と比べて100倍の出力を得ることができる。研究結果は、2020年3月9日付けの『Nature Nanotechnology』に掲載されている。

逆電気透析発電(RED)は、塩分濃度の差を利用して発電する方法で、イオン交換膜を通過する陽イオンや陰イオンを利用してエネルギーを取り出す技術だ。溶液として海水と淡水を利用できることから、再生可能エネルギーとして注目されている。

REDシステムの発電性能は、イオン交換膜の厚みと多孔質性に依存する。これまでは、グラフェンベースの薄膜を作製してから、透過性を持たせるために多孔質化を試みるアプローチが主だったが、薄さと多孔質性の両立は難しいとされてきた。

今回研究チームは、薄さと多孔質性を両立させるため、従来とは逆に、小さい分子を組み合わせて大きな多孔質膜を作る方法を採用した。まず、水の表面に親油性の分子である多環芳香族炭化水素を広げると、分子はビルディングブロックとして薄いフィルムを形成する。次に、フィルムを加熱して分子同士を架橋することで、堅牢で安定した炭素ベースの薄膜の作製に成功した。

研究チームが開発した膜は、厚みが2.0±0.5nm、孔径が3.6±1.8nmで、カリウムイオンを通すようにできている。REDシステムにおける出力密度は67W/m2となり、従来のイオン交換膜や文献で報告されているプロトタイプのナノ多孔質膜の性能の約100倍を達成した。

ビルディングブロック分子を変えることで、膜特性のカスタマイズが可能だという。また、RED技術を逆に利用した電気透析は、海水を淡水化する手段にもなる。

研究チームを率いるGrégory Schneider准教授は、「この分野における多くの研究は、より良い触媒を作ることに焦点を当てており、膜はいくぶん進歩の見込みがないとされてきた。今回の新しい発見は、発電、淡水化、より効率的な燃料電池の製造にとって新しい可能性を開くだろう」と、期待を込めている。

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