軽量高剛性ガラス繊維の物性を予測する機械学習アルゴリズムを開発

金属結晶のような規則性を持たないアモルファス構造のガラスにおいて、密度と弾性率を正確に予測できる機械学習アルゴリズムが開発された。 Image credit: Qi Group

多様な添加酸化物を含有する10万種類のSiO2系ガラスの、密度と弾性率を正確に予測できる機械学習アルゴリズムが、ミシガン大学の研究チームによって開発された。自動車や風力タービンに用いられる繊維強化複合材料に向けて、軽量で非常に高剛性のガラス組成を設計できると期待される。研究成果が、2020年3月20日の『npj Computational Materials』誌に公開されている。

ガラス繊維や炭素繊維、アラミド繊維などを強化材とする高分子複合材料は、自動車や航空機、建築構造、スポーツ用品、産業機器などに幅広く活用されている。その中でガラス繊維複合材料は、非常に安価に製造できることから市場の80%以上を占めている。しかしながら、軽量性や弾性率、引張強度において炭素繊維やアラミド繊維に比べ劣り、その結果、密度との対比で示す比弾性率や比強度が1/2から1/3に留まっている。

今後、ガラス繊維複合材料の用途範囲を拡大するには、ガラス繊維の重量密度を低下させるとともに、弾性率や引張強度を向上させる必要がある。現在、ガラス繊維複合材料は、自動車やトラック、風力タービンに使用されているが、これらをもっと軽量かつ高剛性にするメリットは大きい。例えば自動車における10%の重量軽減は、走行可能距離を6~8%伸ばすことができる。風力発電用タービンブレードを軽量化、大型化できれば、変換効率を高め、同じ風速でも大きな電力を発生させることができる。

研究チームは、軽量で高弾性率のガラスを開発することを目的として、ガラスの特性を予測するコンピュータシミュレーションの構築にチャレンジした。ガラスは、金属結晶のような規則性を持たないアモルファス構造であるので、原子間結合や物理的/化学的性質を予測するのが難しい。コンピュータシミュレーションを活用しても非常に長い計算時間が必要なうえ、機械学習のための原子間結合や特性に関する基礎データも少ないのが現状だ。

研究チームは、少量のデータに適した機械学習モデルとして、実験データを原子間結合の物理モデルに結びつける分子動力学法を構築した。さらに、実験データによるトレーニングとして、勾配ブースティング機械学習フレームワークとLASSO回帰法を導入した。その結果、1~2種の添加酸化物を持つSiO2系ガラスのデータから、10種以上の添加酸化物を含有する、10万種類の組成を持つガラスの密度と弾性率を、正確に予測することが可能になった。

研究チームを指導する材料科学工学科のLiang Qi教授は、軽量と弾性率に加えて引張強度や靱性、融点についても予測できるシミュレーション法を開発するために、他の研究機関に積極的に情報提供し、この研究分野を活発にしたいと考えている。

関連リンク

Designing lightweight glass for efficient cars, wind turbines

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