- 2020-5-15
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- 6接合太陽電池, III-V族6接合太陽電池, III-V族多接合太陽電池, John Geisz, Nature Energy, Ryan France, 国立再生可能エネルギー研究所(NREL), 太陽電池, 学術
アメリカの国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の研究チームは、太陽電池のエネルギー変換効率において2つの世界記録を樹立したと発表した。6種類の材料を積層した「6接合太陽電池」を開発し、集光型で47.1%、非集光型で39.2%の変換効率を達成した。高効率デバイスに対する新しい市場の展開が期待できる。研究結果は、2020年4月13日付の『Nature Energy』に掲載されている。
太陽電池にもさまざまな種類があるが、たとえば単接合型の地上用太陽電池の変換効率は約30%に留まっている。材料によって吸収する太陽光の波長が異なるので、それらを組み合わせて幅広い光吸収特性を持たせた多接合型太陽電池の開発が進められている。
中でも、III族元素のアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)と、V族元素のリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)を組み合わせた化合物などを複数積み重ねた「III-V族多接合太陽電池」は、高い変換効率が期待できるが、現在は製造コストが高いことから、人工衛星などに用途が限られている。
「コストを下げる1つの方法は、必要な面積を減らすことだ。ミラーを使って光を1点に集光すれば良い。すると、平面型のシリコンセルと比べて100分の1、もしくは1000分の1に材料を抑えられる」と、論文の共著者であるRyan France氏は語る。集光することで材料コストを抑え、変換効率の改善も期待できる。
これまでは、集光型ではIII-V族4接合太陽電池が、世界最高効率を示していたが、研究チームは今回、モノシリック、直列接続、反転変性構造の「III-V族6接合太陽電池」を開発し、143倍まで集光して世界最高となる47.1%を達成した。非集光効率は39.2%で、これも従来の記録を塗り替えている。
「このデバイスは、多接合太陽電池の並外れた可能性を実際に示している」と、筆頭著者のJohn Geisz氏は語る。開発したデバイスは、接合部の性能をサポートするための層も合わせて約140層にもなるが、厚みは人の髪の毛の3分の1以下となっている。
「熱力学的観点から100%の効率を達成することはできないが、50%以上にすることは実際のところ、非常に可能性が高い」とFrance氏は語る。現在の課題は、電流の流れを妨げるセル内部の抵抗障壁を下げることだという。研究チームは、市場への展開も見据え、低価格化にも重点的に取り組んでいる。