「メビウス・カライドサイクル」――基礎研究やロボット工学等、多分野への応用が期待できる新たな構造を開発 OIST

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沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2018年12月18日、幾何学的な形状とちょうつがい(ヒンジ)から成り立つリング状の構造物「カライドサイクル」の新型「メビウス・カライドサイクル」を開発したと発表した。

カライドサイクルは現代美術館で見られるような幾何学的な彫刻のようなオブジェのようなもので、”花のつぼみが何度も繰り返し咲くように”内側から外側に向かって連続的に裏返すことができる。

従来型のカライドサイクルは6つの三角錐からできており、ある一定の方法でしか動かせない。そこで、OISTのヨハネス・シュンケ博士らの研究グループは、他にも内側から外側に向かって連続的に裏返せるオブジェを構築できないかと研究を始めた。

従来のカライドサイクルは6つの同じ三角錐が一列に繋がったものを作り、このチェーンの両端を繋げることで作製できる。このとき、隣接するヒンジ間の角度は90度になっており、この関係を正確に保てば、従来型のカライドサイクルは内側から外側にひっくり返す動きが可能で、3回対称を持った構造物となる。

似たようなカライドサイクルは8つの三角錐でも作ることができる。しかし、この場合は単一の決まった動きで回転せず、様々な方向に動いてしまうという問題がある。このように”自由度”が増すと、オブジェは不安定な動きになり、応用が難しい。そこで、研究グループは単一自由度を保持したまま、7つ以上の同じ形状のピースを持つ新しいカライドサイクルを作ることは可能かを検討した。

(左)従来のカライドサイクル (右)新開発のメビウス・カライドサイクル

研究グループは、隣接するヒンジは直角である必要はないことに着目。そして、 数学やコンピュータ・シミュレーション、紙製と3Dプリンター製の両モデルを活用してオブジェを作成・分析した。すると、繋がる三角錐の合計数に応じて決定される特別な「ねじれの角」が、各カライドサイクルに存在していることを発見した。

ヒンジ間の角度が小さすぎると、三角錐のチェーンの両端を閉じたリングを形成できない。一方で角度が大きすぎると、作成したオブジェは、”自由度”が増し、這いまわる蛇のような動きをする。

研究グループはメビウスの帯として知られている有名な幾何学的オブジェにちなんで、開発した構造物を「メビウス・カライドサイクル」と名付けた。メビウスの帯は短冊状の紙片の一端を180度ひねり、もう一方の端に繋げることで作ることができる。メビウスの帯は中心線に沿ってなぞっていくと、指は帯の長辺をクロスすることもなく、スタートした時と反対の面の出発点に戻るという性質を持つ。通常の円形リングと異なり、裏表が存在しないため、メビウスの帯の面や辺の数は1だ。

メビウス・カライドサイクルも、メビウスの帯と同様のトポロジー性質を持っており、表や裏という概念は存在しない。また、メビウス・カライドサイクルは540度のねじれを含んだ帯状の形状をしているため、メビウスの輪と同様に1つの辺と1つの面しか存在しない。

この独特な特性を活かせば、メビウス・カライドサイクルは多様な用途に応用できる可能性がある。具体的には、新たな撹拌機やエネルギー伝達装置、ロボットアームを設計する際の基礎につながり得るという。

さらに、メビウス・カライドサイクルに基づいて分子を合成できれば、分子スケールでは摩擦は無視できるため、その分子は永遠に回転する性質を得て、熱容量を極めて高く保てる可能性が高いという。他にも、宇宙船の傘やソーラーパネルを含めた、形状が変化することで機能する構造体など、複数を結合させることで展開型の装置も可能になるとしている。

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