MIT、自動運転車の制御ユニットを自律的に学習させるシミュレーター「VISTA」を開発

マサチューセッツ工科大学(MIT)は、ドライバーレスの自動運転車を路上走行前に訓練するための新しいシミュレーションシステムを開発した。非常にリアルな世界を作り出し、起こり得る最悪のシナリオに対応する術を学習させるシステムで、研究成果は2020年1月13日、『IEEE Robotics and Automation Letters』に掲載されている。

自動運転車両に搭載されている制御ユニットは、人間のドライバーが実際に運転した軌跡である現実世界のデータセットに大きく依存している。この実データから様々なシチュエーションに対応する安全な操舵制御を学習するわけだが、実際にドライバーが運転した現実のデータには、事故を起こしたり、車路から逸脱したりといった、真に危険な状況で取得されたデータは、「幸いにも」ほとんど含まれていない。

そのため、「シミュレーションエンジン」と呼ばれるプログラムが、バーチャルな道路状況をレンダリングし、危険な状況を再現し、制御ユニットの回避訓練を行うが、こうしたシミュレーションから得られた学習制御が、そのままフルスケールの実車へ適用されたケースはまだない。

今回MITは、「VISTA」(Virtual Image Synthesis and Transformation for Autonomy)と呼ばれるシミュレーションエンジンを作成した。これは、ドライバーが実際に道路を走行したわずかなデータセットのみを使い、自動車が実世界で取りうる道筋から、事実上無限の新しい視点を作り出すというものだ。これは、あらゆる可能な運転方法と運転環境をカバーできる。

制御ユニットは、入力として道路の視覚的観測データのみを受け取り、それに対する出力としての操縦コマンドを予測する。その際に、エラーを起きる(衝突する)度にフィードバック信号を与えるという試行錯誤を繰り返す機械学習技術である「強化学習」が用いられた。制御ユニットは、事故を起こすことなく走行した距離に応じて評価されるため、車線変更後の復帰や、衝突回避など起こり得るどんな状況にも対応できるよう、目的地まで安全に走行する手段を自律的に学習できる。

研究チームは、VISTAで訓練した制御ユニットをフルスケールの無人自動運転車に搭載し、未経験の道路を走行させることに成功した。また、さまざまな事故状況を模倣し、車路から逸脱するような方向に車を向けても、数秒以内に安全な走行コースに復帰させることができた。

研究チームによると、シミュレーションでend-to-end強化学習を使用して訓練されたコントローラが、実物大の自動運転車にうまく導入されたのは、これが初めてだという。今後、夜と昼、晴天と雨天など、単一の走行コースからあらゆる種類の道路状況や、道路上の他の自動車とのより複雑な相互作用をシミュレートしたいとしている。

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