医療経験ゼロでも外科医並みのスピード――MIT、致命的な出血に対処する医療ロボットを開発

Credits:Photo: Nicole Fandel

MITの研究チームは、簡単なトレーニングを受けた救助者が、負傷した患者の血管にカテーテルを挿入して迅速な治療をするのに役立つ、AIを搭載した携帯型超音波ガイド付き介入装置(AI-GUIDE)を開発した。研究成果は『Biosensors』誌に2021年12月18日付で公開されている。

出血は、外傷による死亡の主な原因だ。重度の出血がある場合、中心動脈や中心静脈にカテーテルを挿入して輸液や投薬などを施す必要がある。救命できるかどうかは、いかに迅速に救急治療できるかにかかっているが、カテーテル挿入などの処置ができるのは高度なトレーニングを積んだ医療従事者に限られている。救急隊員では処置できないため、病院に運んだ時にはすでに手遅れということもある。

AI-GUIDEは、機械学習の一種である転移学習とロボット工学を融合させて開発された。超音波画像には大腿動脈や静脈を含む血管解剖の重要なランドマークが含まれているため、転移学習のデータセットとして超音波画像を使用している。今回の研究では大腿部の血管をターゲットとしており、市販のポータブル超音波診断装置と連携して、穿刺位置の確認と穿刺をガイドする。

操作方法としては、次の通りだ。救助者は、AI-GUIDEを患者の大腿部と腹部の境目付近に置き、ターゲッティングディスプレイに表示される正しい位置にデバイスを移動させる。指示に従いボタンを押すと針が刺さる。針が血管に正しく刺さったことを確認したら、ガイドワイヤーを血管内に挿入し、その後カテーテルを手動で血管内に挿入する。

大量出血による低血圧状態では血管の形状が変化するため、針が血管の適切な位置に刺さっても血管内に入りきらないことがある。そこで、針が血管に刺さった後に血液の存在を確認することで、穿刺が成功したかを確認できるように工夫している。

医療経験ゼロから15年以上の人を対象として、人体モデルによるAI-GUIDEの穿刺試験を行ったところ、わずか2分間の口頭トレーニングのみで1名を除く全員が1分以内に針を刺すことに成功した。また生きたブタを使用した穿刺熟練者の試験では、カテーテルを挿入するまでに1分程度しかかからなかった。針の穿刺精度とスピードは、経験豊富な外科医が病院で患者に対して行うレベルに匹敵している。

現在研究チームは研究を続け、全ての操作の自動化に取り組んでいる。特に、ガイドワイヤーとカテーテルの挿入を自動化することで、救助者による誤操作や感染の可能性を減らしたいと考えている。

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