- 2020-5-19
- REPORT, 機械系
- 3D CAD, pronoDR バージョン3.0, Unity, VR, サブスクリプションライセンス, デザインレビューシステム, ヘッドマウントディスプレイ, ワークステーション, 株式会社プロノハーツ
2020年4月24日、製造業向けVRデザインレビューシステム「pronoDR バージョン3.0」が、株式会社プロノハーツから発売された。「pronoDR」は、製造業向けに開発された、VRを活用したデザインレビューシステムだ。バージョン3.0は、2018年に発売されたバージョン2.0と比べ、データ変換速度が大きく向上し、新機能の追加、機能強化が行われている。また、バージョン3.0からサブスクリプションライセンスでの提供が開始され、導入のハードルが大きく下げられた。
今回は、製品の特長や4月24日に行われた製品発表会の様子について紹介していく。(執筆:馬場吉成)
すべての人が使えるVRへ
pronoDRは、3D CADによる設計データをVR用のデータへ変換し、ヘッドマウントディスプレイを使って実寸大でデザインレビューが行えるシステムだ。これにより、工具の干渉や配線の取り回し、作業者の視線なども、現物に近い臨場感をもって確認することが可能となる。設計と製造のコラボレーションが進むだけでなく、図面を読み解くことができない営業部門なども積極的にデザインレビューに参加できるようになる。
今回発売された最新バージョンの「pronoDR バージョン3.0」では、「すべての人が使えるVR」をコンセプトに、以下の三つの点が機能強化、追加された。これに加え、本バージョンからサブスクリプションモデルでの提供が開始されている。
CADデータ変換を簡便・高速に
pronoDRでは、今後の展開も視野に入れ、ゲームエンジンとして広く利用されるUnityをVR用エンジンとして採用している。デザインレビューを行うにはCADデータをUnity向けにファイル変換する必要があり、旧バージョンでは幾つかの手順を経る必要があった。また、大規模データを変換する場合には、幾つかに分割して変換する必要があった。
pronoDR バージョン3.0ではGUIを刷新。ファイル選択を行い、変換ボタンを押すだけの単純操作でVR用のデータが作成されるようになった。作成されたファイルを一覧から選べば、VR画像を見ることができる。大規模データについても、事前にCAD上で小さなブロックに分ける必要はなくなり、そのままのサイズで変換が可能となっている。
データの変換処理時間に関しても、バージョン2.0と比較して、約10倍、最大で15倍の高速化が実現された。データ変換時のストレスが大幅に軽減されている。
部品の選択・移動を可能に
また、旧バージョンでは、部品単位での移動ができなかったが、バージョン3.0から可能となった。VR空間内で部品を長押し選択することで移動用ツールが表示され、部品をXYZ方向に平行移動させる。これにより、一時的にパネルを外して内部を確認したり、可動部分を実際に動かしたりすることができる。インポートデータ単位(サブアセンブリ単位)での平行移動も可能だ。選択部品の名称表示にも対応している。
表示機能を強化
さらに、バージョン3.0では、表示機能が各種強化された。まず、3D CADでよく使用される形状を把握しやすくするための、3Dモデルの稜線(エッジ)表示に対応した。選択部品を透過表示する、ガラス(透過)表示にも対応。ガラス表示は部品単位で設定可能だ。
その他、VR空間内の閲覧者の足元に足跡をつける機能が追加された。バージョン2.0より、ユーザーの要望に応じて実装していた機能であったが、バージョン3.0で標準搭載となった。建造物や乗り物の中における、利用者の立ち位置の検証等に有効活用できる。
サブスクリプションでより導入しやすくなる
pronoDRは、バージョン3.0よりサブスクリプションライセンスでの提供(新規契約の場合)となり、8万円(税抜き)の月間保守契約、または48万円(税抜き)の年間保守契約が選べる。また、10日間フル機能を試せる試用ライセンスも提供される。ワークステーションやヘッドマウントディスプレイなどの、ハードウェアの貸し出しにも対応している。
かつて数千万単位にもなる設備投資が必要であったVRシステムが、安価でより身近なものとなった。pronoDRは、大規模なプラント建設から、小型装置の開発まで利用用途は広い。大手はもちろん、中小の製造業でも気軽に使えるVRシステムとして、今後の広がりに期待する。
オンラインによるデザインレビューへの期待
pronoDRは、設計業務の効率化、オンライン化の促進に大きく貢献するシステムといえる。製造部門、設計部門、営業部門は、それぞれ離れた場所にある場合も多い。pronoDRを活用することで、遠隔地にある部門間であっても、実際の装置の前に集まっているかのようなデザインレビューが行える。このようなツールが増えることで、設計のやり方は今後大きく変化していく。
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ライタープロフィール
馬場 吉成
工業製造業系ライター。機械設計の業務を長く経験。元メカエンジニアで製造の現場を直接知るライターとして製造業向け記事、テクノロジー関係の記事を多数執筆。大学時代にプロボクサーをやっていて今はウルトラマラソンを走り、日本酒専門の飲食店も経営しているので時々料理や体力系ネタ記事も書いています。