電気刺激で距離を伝えるロボット手術支援システムを開発――手術で精密にロボットアームを使う

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脳や髪の毛のように細い血管など繊細な組織の手術を行う際は、「確かな手」と常にクリアな視界が重要だ。外科用カメラによって手術中の術者の視界は改善しているが、確かな手はいまだ向上していない。手術支援ロボットのような新しい外科技術では、壊れやすい組織の近くで手術を行う際に、意図せず強い力を与えて傷つけてしまうことがある。

学術誌『Scientific Reports』2020年1月号で発表されたテキサスA&M大学の研究は、術者の指先に電気刺激を与えることで、ロボットアームが対象物に接触するまでの距離を、術者に正確に認識させるというものだ。

ロボットアームには、生体組織への接触を十分な精度で制御することが難しいという課題がある。「今回開発した手法により、術者はロボットアームが対象物からどれくらいの距離にあるのか直感的に把握でき、その情報をもとに壊れやすい構造物に適切な力で触れることができるようになります」と、電気・コンピューター工学科のHangue Park助教授は述べる。

ロボット手術支援システムは、自分の指の動きでロボットアームを制御することで、複雑な処置を遠隔で行える。ロボットアームに取り付けられたカメラからの視覚情報がモニターに映り、術者はモニターを見ることでロボットアームと自分の指の動きを一致させる。モニターを見て、ロボットアームの位置や対象物までの距離を知ることができるが、Park氏によると、視覚情報だけでは細かい指の動きのガイドに十分ではないという。この方法では、実際の指がどれくらい離れているかを術者は間接的にしか知ることができず、実際の指の距離感覚が鈍ってロボットアームの操作に影響が出るためだ。

この問題に対処するために、Park氏の研究チームは、視覚的なフィードバックに依存せずに、術者に距離情報を提供する新しい手法を開発した。電気刺激プローブ付きの手袋から異なる周波数の電流を指先に流すことで、対象物との距離と電流パルスの周波数を関連づける。

研究チームは、モニターからの視覚情報と電気刺激の両方を得た場合と、視覚情報だけの場合で、近さを推定する能力を比較した。その結果、電気刺激を受けた術者は、対象物への近さをより意識しており、接触力を約70%低下させることができた。電気パルスを介して伝えられる近接情報は、モニター画面上に数値などの情報を載せる視覚補助よりも約3倍効果的であることがわかった。

Park氏は、この新しいアプローチによって、意図しない組織損傷のリスクを抑えながら、手術中の操作性を大幅に向上させられると、その有効性を評価している。

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