東京大学は2023年6月12日、「ロタキサン」構造を持つ物質を巨大化させたMOFaxane(モファキサン)の合成に成功したと発表した。
ロタキサンは、リング状の分子に軸状の分子が貫通した構造を持ち、軸状分子の両端にストッパーが付いている。リング状分子は軸状分子上を自由にスライドできるという独特の構造から、分子マシンなどにも利用されてきた。しかし、これまではロタキサンは上記のような軸状分子とリング状分子の組み合わせのみで、その他の物質の組み合わせを実現することが化学者の間で課題となっていた。
今回の研究では、多孔性金属錯体(MOF)と呼ばれる無数の細孔を持つ結晶に着目。従来そのナノメートルサイズの細孔内に、ガス分子以上の大きさの高分子が入り込むことはできないとされてきたが、長い紐状の構造を持つ高分子がMOFの細孔内に取り込まれる現象を発見。MOFの結晶サイズよりも長い高分子を用いることで、紐状の高分子がMOFを貫通している構造を持つ物質の合成に成功した。
ロタキサン構造の物質を結晶と高分子の組み合わせで実現するのは世界初で、従来比1000倍以上のサイズでの合成に成功した。
ロタキサンは、その独特の構造から生まれる独自の性質により、自己修復材料や耐衝撃材料などの高機能材料への応用が進んでいる。今回ロタキサン構造を取る物質の種類を増やしたことは、ゴムやコーティング材料、電池材料など身の回りの材料の高機能化につながるという。
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