身につけるだけで発電するデバイスも――温度差5℃で動作する熱電発電素子を開発

早稲田大学らの研究チームは、物質に温度差をつけると起電力が生じる「ゼーベック効果」を利用して温度差5℃で発電するマイクロ熱電発電素子を開発したと発表した。従来の構造を見直し、既存の半導体集積回路の製造技術を利用することで、デバイスの機械的強度を維持したまま製造コストも下げられる。研究成果は、2018年6月18~22日にハワイで開催された『VLSIシンポジウム』で発表された。

従来のマイクロ熱電発電素子は、内部に十分な温度差を持たせるため、長さ約10~100μmのシリコンナノワイヤを利用している。そしてワイヤ間の温度差を確保するため、基板に空洞を設けてナノワイヤを架橋するキャビティ構造としている。しかしこのキャビティ構造は、デバイスの機械的強度を弱めるとともに製造コストを上昇させるという問題がある。

これに対し、今回研究チームが発明した構造ではキャビティ構造ではなくシリコン基板からの熱流制御により、ワイヤ内に十分な温度差を持たせることができ、かつナノワイヤを短くすることで熱電性能が上がることをシミュレーションで示された。実際に長さ0.25μmのナノワイヤデバイスでは、従来のデバイスと同等の電力密度を持つことを確認した。さらに冷却効率を高めるためシリコン基板を50μmまで研磨して電力密度を10倍に増やし、温度差5℃で1平方cmあたり12μWの出力を達成した。これは間欠的な無線通信を可能にするのに十分な電力だ。

製造には、半導体集積回路の製造ラインでも使用するArF液浸露光装置を用いている。既存の技術と装置が利用可能なため、大量生産による大幅なコスト削減も見込まれる。

様々な条件化で定常的に発電できるようにするなど課題は残っているが、例えばジョギング中にスマートウォッチを充電するなど、周りの環境や体温を利用して作動するIoTデバイス電源への応用などが期待されている。

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Opening up a pathway to cost-effective, autonomous IoT application

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