- 2022-2-8
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- ACS Nano, グラフェン, ドイツ電子シンクロトロン(DESY), ナノ粒子, パラジウム, パラジウムナノ粒子, 二酸化炭素, 学術, 水素, 水素ガス, 簡易貯蔵デバイス
自動車や航空機などの燃料や、製鉄、セメント製造において利用される水素は、燃焼時に二酸化炭素を発生しない次世代エネルギーとして期待されている。しかし、現状では水素ガスは最大700気圧の加圧タンクで保管するか、−253℃で冷却して液化する必要があり、輸送や貯蔵の面で効率が悪くコストがかかるという問題がある。
ドイツ電子シンクロトロン(DESY)を中心とする研究チームは、ナノ粒子を水素の簡易貯蔵デバイスとして利用するという革新的なアイデアを発表した。パラジウムナノ粒子と水素が相互作用することで、あたかもチョコレートでコーティングするかのように水素がパラジウム表面を覆うというもので、研究の詳細は『ACS Nano』誌に、2021年10月11日付で公開されている。
パラジウムが水素と相互作用することは以前から知られていた。パラジウムはスポンジのように水素を吸収してしまうため、水素を取り出す際に問題があったが、研究チームは、パラジウムをナノ粒子にするアイデアを思いついた。
直径わずか1.2nmと非常に小さいパラジウムナノ粒子を頑丈にするために、イリジウムを核として中心に置き、パラジウムが周囲を覆うことで安定化させた。担体としては非常に薄い炭素シートであるグラフェンを利用し、ナノ粒子を2.5nm間隔で担持させた。
水素を接触させると、水素はパラジウム内部にほとんど取り込まれることはなく、ナノ粒子の表面に付着した。水素は表面に付着しているため、わずかな熱を与えるだけで簡単にナノ粒子表面から取り出すことができた。
今後研究チームは、この手法でどの程度の貯蔵密度を達成できるかを確認したいと考えている。また、実用化に向けてはいくつか克服しなければならない課題があるという。例えば、担体にはグラフェンよりも適した炭素構造があるかもしれない。研究チームは、微小な孔を持つ炭素スポンジの使用を検討している。細孔により表面積を増やすことでパラジウムナノ粒子を多く担持できる可能性があるからだ。