人間の皮膚のように「感じる」3Dプリント製センサー内蔵の指先

英ブリストル大学の研究チームは、人間の触覚の仕組みを模倣して3Dプリントで作った人工触覚センサーを用いて、その触覚データと人間の触覚の神経記録とを比較した。その結果、驚くほどの一致が見られ、人工の指先が本物に似た人工的な神経信号を生成できることが分かった。この研究に関する2本の論文は、2022年4月6日付で『Journal of the Royal Society Interface』に掲載された。

機械は世界最高のチェスプレーヤーに勝つことはできるが、チェスの駒を扱うことはできない。ロボットが器用でない理由の1つは、物をつかむ人工のグリッパーには人間の指先のような繊細な触覚がないということだ。触覚は、物を拾い上げたり扱ったりする際に人間の手を誘導するために使われている。

つまり、触覚がある皮膚を3Dプリントすることができれば、より器用なロボットの製造や義手の性能向上に役立つ可能性がある。

今回の研究で用いられた人工の指先は、人間の指先の皮膚の働きを模倣して設計されている。人間の触覚の仕組みの主要な原理は、表皮と真皮の間に存在する小さな隆起の真皮乳頭の動きで接触したことを感じるというものだ。

そこで、柔軟な人工皮膚の下側に3Dプリントしたピン状の乳頭のメッシュを作製。これを用いた生体模倣人工触覚センサー「TacTip」により人工の指先に「触覚」を作り出した。人工の乳頭は、柔らかい材料と硬い材料を混ぜ合わせて、生物が持つ複雑な構造を作り出すことができる高度な3Dプリンターで作製した。人間の皮膚は神経細胞が乳頭の動きを感知するが、この触覚センサーではセンサーの中のカメラを用いる。

今回の研究では、この人工の指先から得られるデータと、1981年に発表された人間の触覚の神経記録データとを初めて詳細に比較した。今回の研究で、3Dプリントされた人工指先が同様の隆起形状を「感じる」かどうかをテストし、その結果がかつて記録された神経のデータと驚くほど一致することを発見した。40年以上前の記録では、変化する曲線の線上に小刻みなギザギザが現れており非常に複雑なものであったが、今回の人工触覚によるデータにも同じパターンが見られた。つまり、「触覚」を持つ3Dプリントされた指先が、本物の触覚ニューロンからの記録に似た人工的な神経信号を生成できることが分かった。

この研究は、人間の皮膚の複雑な内部構造が人間の触覚をどのように作り出しているかを明らかにするのに役立つものだ。その一方で、今回の研究では、人工指先と人間の神経信号が驚くほど一致していることが分かったものの、微細な部分では人間の皮膚ほど人工指先が敏感ではないことも分かった。

研究チームの目標は、本物の皮膚と同じくらい、あるいはそれ以上に良い人工皮膚を作り出すことだ。敏感さの問題について、研究チームは3Dプリントされた皮膚が実際の皮膚よりも厚いことが原因ではないかと考えており、現在、人間の皮膚のような微細なスケールで構造を3Dプリントする方法を探っている。

関連リンク

Touchy subject: 3D printed fingertip ‘feels’ like human skin
Artificial SA-I, RA-I and RA-II/vibrotactile afferents for tactile sensing of texture
Artificial SA-I and RA-I afferents for tactile sensing of ridges and gratings

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